2012/10/16

『ゴールデンスランバー』

ゴールデンスランバー



★★★★ -1の理由:人が死にすぎる。



原作未読。
どうしようもない悪(権力、闇社会などにあらわれる)と、一市民との対決というのは伊坂作品で何度か目にしている構図。



普通の男・・・人のいい青柳くんが、首相暗殺犯に仕立て上げられてしまうが、学生時代の仲間や、彼が今までに築いてきた人間関係によって窮地をぎりぎりしのぐという話。



普通の男ががんばるというのはいいものだけど、同時に超人的なワザもないので戦いは苦しい。そして、男にきせられた首相殺しに関わる人間たちも、大勢死んでしまい、これもつらい。



人のいい男として堺雅人はうってつけでした。いい人だけど、諦めずヤケにならず策を練るあたりが、とても好人物。
助ける仲間、後輩のカズ役は劇団ひとり。彼も普通の男らしく好感。
学生時代の恋人で、今は別の男と家庭を持っている樋口役に竹内結子。クールな娘とともに、こっそりと青柳くんを助ける。



人間の最大の武器は習慣と信頼。



人間関係あってよかったね、みんな素敵な仲間たちだったね、というアピールがあると白けるところだけど(私の好みだと、さらにクールに振る舞ってくれるほうが嬉しいが)、ぎりぎり、やるじゃん、俺たち!と拍手できるところ・・・かな。



ファンタジーすぎず、ぎりぎりリアルとファンタジーの境目なのかも。悪役の香川照之が類型的な役づくりにしているのも、きっとぎりぎりファンタジー風味を出すためなんだろうと思う。



などという点では、原作者のもつ雰囲気をよく出しているのですね。



音楽は全て斉藤和義によるもので、ロック!ロック!ロック! 躍動感があってまっすぐな音楽が青柳くんのこころの青春を表しているよう。とても良かったです。





『ソラリス』

ソラリス Solaris 2002年 アメリカ



監督/スティーブン・ソダーバーグ
ジョージ・クルーニ,ナターシャ・マケルホーン,デレミー・デイビス,ヴァイオラ・デイビス,ウルリッヒ・トゥクール



★★★



「ソラリスの陽のもとに」レフ著,が原作で,過去には『惑星ソラリス』タルコフスキー監督で製作されているそうだ。



惑星ソラリスの探査をしているプロメテウスでは異変が起き,地球とのコンタクトが取れなくなっていた。そして乗組員ジバリアンから,心理学者のクリス・ケルビン(クルーニー)あてに,こちらに来てくれとメッセージが入り,調査に向かうことに。



 



到着するとSOSを送ってきたジバリアンは遺体となっており,二人の乗組員のみがいるだけで他の乗組員も自殺してしまっていた。



夜になればわかる,と言われたその夜。



自殺のため死んでしまったはずの妻レイアが,ロックしていたはずのクリスの室内にいつのまにか居た。彼女はなぜ自分がここにいるのかが分かっておらず,自殺したことも記憶にはないようだった。
肉体も記憶もある,すでに死んだ人間が目の前にいたのだ。



クリスは彼女をステーションから宇宙へ放出。



そして二日目の夜。うとうと寝て,目を覚ますと,そこには妻レイアが再び室内に。昨日の記憶はなく,やはりどうやってここに来たのかも記憶がない。



死んだ人間が目の前に現れるのは間違っている,とレーザーのような装置で彼らを消し去るという科学者。失ったはずの妻を二度と失いたくないという執着から,賛成できないクリス。
危険なことだと理性では分かっていても,どうしても温かく美しい妻を処理することができなくなってきていた。



自分というものが,本当に間違いなく自分自身であることをう疑い始める不安感は,妻のレイアがになっていて,どうやったら保証してもらえるのか,これはアイデンティティの問題?



自分がクリスの記憶から生まれたものであると自覚した彼女は,自ら装置で消し去るよう願いでるが,クリスによって阻止されたため,薬品をかぶって死のうとするが,照射以外の方法では生き返ってしまい,まさに死にながら生きている状態。



ほぼ妻であるこの目の前のものを,妻であるとして執着するクリスは,愛の名の下に生死の境界を守ることを放棄。
最終的には,地球へ帰る船に乗らず,ソラリスへと落ちていくステーションとともに残った。



・・・アメリカ人は本当に何でもかんでも,愛の話にしてしまう!



原作も前作も読んでいないけど,たぶんソラリス的なもの,とか神の問題とかを扱っているはず。たぶん。



不安定になっていた妻は,妊娠したことをクリスに言わずに堕胎していた。もはや彼女を受け止めきれず,ケンカの挙句,生きたくなければそれでいい,的なことを言って家をでてしまい,少し後に帰宅してみるとレイアは自殺していた。



そういう負い目もあって,本物でなくても本物だと思うことにしたい,と思いが暴走。そこで自分はニセモノだから消し去ってほしいという彼女のほうがまともな判断である。



深遠なテーマと思わせておいて,意外とクリスの愛妻を失ったことによる喪失感,虚無感,後悔をソラリスが囲い込んでしまうという話のようでした。



クリスの記憶からレイアが生まれたのならば,彼女といることは過去の思い出のなかに閉じこもることです。それは,自分の人生を生きているとは言い難い。



レイアとの出会いや生活のシーンも予告なしにすっと入ってくるので,どれが過去のものか,どれが現在のものか,どれが想像のものか,混乱するように仕向けられています。こうなると,最初からすべてクリスの心象を見ているといえます。



<わたし>はどこにいるのか,誰かの記憶のなかでしか見つけられないものなのか。



クリスのこじれた愛とともに,これがテーマだったのかと思います。