ISBN:4-10-245101-3 新潮文庫
★★★★
軽快な出だしから、楽しい探偵家業の話、しかしいつの間にかゆっくりゆっくり密閉空間に閉じ込められていく感覚へ。
探偵は、ブルー。依頼主、ホワイト。調査相手、ブラック。
探偵は調査対象の住む向かいのアパートから、彼の生活を見張り、報告書をホワイトへ送る。簡単な仕事のはずだったのに、何も起こらない。延々と何も事件は起こらない。
何も起こらず、ゆえに探偵の仕事がいつ終わるのかが分からない。ほとんどアパートから出ないブラックをただじっと見つめる毎日を一年以上続けるうちに、探偵は自分自身の生活を失っていく。恋人も失った。そして、思考する時間だけがたっぷりで、自分自身の仕事のことを考え出す。
しかし、ホワイトの差し金でこの不自由なうつろな日々に追い込まれているのではと考えた探偵は、ついにブラックへ話しかける。彼が話すには、職業は探偵であり。誰かを見張る毎日、うつろな目。
自由になりたい、ブルーはついにブラックのアパートへ乗り込む。ブラックは仮面をつけて、銃口を向けて待っていた。ブラックは、ブルー。ブルーの立場は、ブラックと同じ。見つめていたはずの自分が、見つめられていたと判ったときの、背筋の冷たさといったら。
彼の行き先や、ブラックのその後は書かれない。生きてるのに、死んでしまうようなことのひとつが、自分の生活を奪われ、他人のシナリオに組み込まれることなのだ・・・
■もとはオースターが戯曲として書いたものを短編にしたとのこと。それ、読んでみたい。
■ブルーが思い馳せる過去の事件や、雑誌に掲載された未解決事件の描写、映画のような描写でカッコいい。