2010/02/12

『宵山万華鏡』森見登美彦

ISBN:978-4-08-771303-9 2009年 集英社



☆☆☆☆



京都、祇園祭宵山の一日をめぐる短編連作小説。どこか別の作品で会ったあの人も登場する手塚治のようなお楽しみもありながら、お祭りの持つ華やかさと禍々しさが溢れています。



馬鹿だから、とだまされる男の「宵山金魚」と騙す側の「宵山劇場」は、明るい学生ノリのモリミー節を。



不思議世界に少し怖い気分、別れの寂しさを盛り込んだ「宵山回廊」「宵山迷宮」は、『きつねのはなし』的なモリミー。



そして最初と最後にはさまれた姉妹の「宵山姉妹」「宵山万華鏡」が、うまく宵山の出来事をまとめています。



たぶん、これからもっともっと花開くと期待したくなるのが森見さんの作品。



これが傑作!とまではいかない理由は、初期に大暴れした森見節(文語調の語りくち)と、幻想的な物語とのはざまにあるからなのだと思います。



飄々としながら、幻想を語ってほしい、と期待をこめて4つ☆。





2010/02/08

『読まず嫌い』千野帽子

ISBN:978-4-04-885027-8 2009年 角川書店



☆☆☆



「野生時代」2008年5月号-12月号、2009年2月号-5月号掲載「読まず嫌い。名作入門五秒前」に加筆修正。



読んだことはないが、気になる。読んだような気にもなっている、「名作」そして「文学全集」。著者自身の読書遍歴とあわせて、現在の読者にとっての「名作」と「文学全集」を語る。



「名作」とは何か?いまや邪魔者扱いか風前のともしび・・・「文学全集」ってどういうものか?
文学全集に収録されたものと、されなかったもの。それは何が違うのか?



世界の文学をある一定の尺度(ってどんな尺度か。「世界」=「欧米」だし)で選んであるので、読めば文学が辿った歴史が分かる。らしい。本当か。



文学史に登場したりしなかったりする文学作品を、「恋愛」「学校」「犯罪」「恐怖」といったカテゴリでくくりながら、文学の歴史に言及しています。



名作と言われると敷居が高く感じる私、それを選んだ人がどういう考えで収録させたのかも気になるので、どうも押し付けがましい気がして手に取ったことはほとんどない。
けれど、長い時代を経て、今読むと、だらだらした感じがかえって新鮮だったり、都合よく気絶してばかりの主人公が面白かったりするのかもしれません。



テーマが「名作」の評論と、文学全集というものへの考え、の2系統に分かれていたのが残念。文学全集への章はさらりとしたほうが読みやすいように思います。





2010/02/02

『きりこについて』西加奈子

ISBN:978-4-04-873931-3 2009年 角川書店



☆☆☆☆



さわやかな読後感。底には「それを私も経験してきた!」という共感、ひとり戦っていたなぁと来た道を振り返って、そうやって今まで来たなとちょっとした自信を感じられる。可愛い、きりこちゃん。



関西の言葉で、「きりこについて」の生まれ、育ちかたを綴っていきます。その言葉のあり方がうらやましい。方言で書く文章が愛らしくなるって、作品から土地の薫りが届いてるようでステキだ。



両親のまっすぐな愛情をたっぷり浴びて、自分は「可愛い」と疑いなく育っていたが、ある一言をきっかけに、自分は「ぶす」で可愛くない!という自分への視点を植え付けれてしまう。



誰かと外見を比べることなんかしなくても、子供時代は「可愛い」と信じてた、私も・・・! 思春期、他人と外見を比べる目線を知ってしまった頃は、すごく居心地が悪いもの。
そして、それはそれ、全部の自分を受け入れることを知って、思春期は過ぎてオトナになっていきます。



外見が「ぶす」だなんて、どうにもならない悩みを、きりこが自分のなかに湧く愛情で乗り越えていく姿が清清しく。





きりこさんっ! おかあさんなんて面倒くさいもん、やらなんで結構さま!猫があるやないですかっ、猫があるやないですかっつって!



※小学生時代、きりこがママゴトで「おかあさん」役しようとしたときの、猫=ラムセス2世の叫び。そうそう、猫になれたらどんなにステキか! 結構さま!っていう語感がたまらないです。