2008/11/26

『感染地図』スティーブン・ジョンソン

ISBN:978-4309252186



☆☆☆☆☆



19世紀半ばの、ヴィクトリア時代、世界最大の都市だったロンドン。下層の人々の住む地域でコレラの感染があっという間に広まった。
コレラは原因も治療法もわからない、致死的な新興感染症で、インドとの貿易が拡大するなかで、交易網に乗ってイギリスを襲うようになっていたのだった。



当時の常識ではコレラは悪臭や死人がつくりだす「瘴気」が原因だと言われているなか、目に見えない細菌が原因だとする説にどうやって至ったのだろうか? 
これは原因がコレラ菌に汚染された井戸水だとされ、ポンプの柄が外されるまでの1週間たらずの間の物語ともいえます。



章立ては曜日ごとに分けられ、二人の探偵が原因を突き止めるまでを時系列で一緒に追っていくような展開、面白い。



探偵のひとりは、ヴィクトリア女王の無痛分娩を成功させた麻酔医、ジョン・スノー。ひとりは渦中のブロード・ストリートの牧師、ヘンリー・ホワイトヘッド。



実験、仮説、実験、思い込みを排除し、理論立てて原因を突き止めるスノーの冷静な知力と粘り強い調査と、毎日のように住民と接する経験から、汚水や無知が病気の原因ではないとの実感が手を結んだとき、目に見えない細菌が冷たく美味しいと評判の井戸水に流れ込んだことがコレラ感染の原因だと突き止めるに至ったのだった。



彼らの足取りと推理の過程とともに、なぜそれまで原因がわからなかったのか、なぜロンドン市の役人たちが反対の立場をとったのか。
当時の医学の常識や市民、マスコミ、医者までもが信じていたでたらめな治療法などを織り込んみながら、彼らの生きた時代の常識や雰囲気も味わえるのが、この時代を立体的に感じ取ることが出来てよい。



たとえばー、人口が爆発的に増えたのに、下水は未発達だった。さらにそれまで各家で溜めていた糞尿は、清潔な!水洗式トイレの登場で、大量の水を含んだ汚水では、すぐに肥溜めがあふれるようになった。あふれた汚水は下水にも、道にも、川にも流れ込み、ロンドンは最悪の悪臭都市になっていたのだ・・・というような。









2008/11/08

『腐女子化する世界 東池袋のオタク女子たち』杉浦由美子

ISBN:978-4121502292 2006年 中央公論新社



☆☆



「腐女子とは・・・」との出だし以外は、各評論家の言葉を受けて、賛成したり反対したりするばかりで、うすっぺらいのであった。残念。



だいたいオタクって書いてるけど、オタクの定義もしてくれてないので、もう、いい加減なものです。



これを読むと、腐女子は30代しかいないのかと思うくらいに、30代の素敵な女子をピックアップ。ふーん。格差社会のひずみだの、社会での女性の立場が男性同士の恋愛を描く小説・漫画を愛読する腐女子を生んだらしい。



って、ものすごくそれは視野が狭い断定で、乱暴すぎます。新書ってこんな内容でいいならアタシだってずうずうしく書けそうな気がして来るんですけど。





2008/08/24

『ABCDEFG殺人事件』鯨統一郎

ISBN:978-652-08625-4 2008年 理論社<ミステリーYA!>



☆☆



両親をなくし、飼い猫をなくしたショックで耳が聞こえなくなった18歳の女の子が主人公。探偵事務所に勤めているアンナは、そこでいろんな事件をある特技を使って解決しまくり。



謎解きが簡単になるなら、やっぱりキャラ立ちしまくっててほしい。アンナちゃんが18歳だなぁって思えない。しかも人が次々に死にすぎだし!



猫とか動物と会話できる探偵がいるのかもしれないが、無機物と話が出来るって・・・いつでも現場から情報がもらえて良いわねー(あまりに謎が簡単に解けて物足りない)





2008/08/23

『不惑の手習い』島田雅彦

ISBN:978-4087712261 集英社 2008年



☆☆☆☆



ムダにいい男すぎる作家、島田雅彦が一流の芸術家、料理家、職人などから手ほどきを受ける体験記モノ。



形から入る人らしく乗馬ではウェスタンな服、左官では量販店で買ったつなぎ、を素敵に着こなす作家でした。



読んでる限り、カンは良いらしく、そこそこ様になっているものも多い。集中するのが上手いのかも。さすがだな、作家。







『のだめカンタービレ』21巻

真澄ちゃんファンであり、恋愛に比重がかかってきたパリ編(真澄ちゃん・・・・カムバーック!)には以前ほどの興味がわかないのだけど、とりあえずって感じで読みましたー。



お、今回はなかなか面白かったです。ミルヒーのダークサイド?というか、ミルヒーの音楽家としての力をのだめにも?!というところまで。





2008/08/20

『闇の聖杯、光の剣』篠田真由美

ISBN:978-4652086223 理論社



☆☆★



<北斗学園七不思議②>
シリーズだというのに、表紙のイラストが違う感じになりました。表紙裏の学園見取り図も。うーむ。シリーズなら同じ見取り図を使ってほしい。だって見てる方向まで違ってるんですけどー。



今回はナチスの残党(のような、でも違う)組織と学園とのつながりが主軸。オカルト風味もあり、ナチの話もあり、美術史がらみもあり、こんな軽いお話に入れても溢れるだろうというエッセンスが・・・ 実際にあることを絡ませるのもいいけど、この枚数なら別に実際の事件とつなげなくてもいいのに。



またも命からがら、のわりにさくっと済ませている中学生たち。もっと怒ってほしい~ 登場人物たちについても、「前作を読んでくれ!」の言葉で済ますのは、乱暴じゃないでしょうか。これをたまたま手に取ったコもいるだろうから、ある程度分かるようにしてあげて・・・・



いまいち主人公ら三人の男の子に肩入れもできないので、残念シリーズになっちゃうかも。







『王国は星空の下』篠田真由美

ISBN:978-4652086032 理論社 ミステリーYA!シリーズ



☆☆☆



<北斗学園七不思議①>
広大な敷地に立つ、歴史ある私学に通う三人の中学生。当然、寮生活。



語り手は1番元気な「アキ」。



字も大きいし、ソフトカバーなので寝る前とかにささっと読むとちょうど良いです。七不思議を解いていくようなので、7作続くのでしょうか? 



主人公の「アキ」、正義漢で猪突猛進型。しかし命に関わるような危険な目に遭うわりに、口外するな、とかいわゆるオトナ社会のグレー理論をしぶしぶ受け入れてます。子どもで、ちょっとオトナみたいな、というあたりを出したいんだと思いますが、中学生の男の子にしては、ちょっと物分り良すぎる気がします。



七不思議の謎解きへの展開が、ひねりがなくて、ああそうですか・・・ですが、軽く読むなら、ま、いっか。



最後の謎解きに登場するのが、アルセーヌ・ルパンの話がヒントになったりするあたり、本当の対象年齢(YA世代)に、ルパンも読んでほしいのかもしれません。