2009/09/17

『猫と庄造と二人のおんな』谷崎潤一郎

1951年 新潮文庫



☆☆☆☆



猫がタイトルにあったので何気なく読み始めたら、谷崎~すごいな。いい。



話の真ん中に置かれているのは年寄り猫(でもまだキレイらしい)のリリー。
そして、リリーを溺愛している庄造。
後妻の福子、元妻の品子。それから庄造の実母おりん(庄造夫婦と同居)。



うだつの上がらない庄造は、おりんと福子一家の差し金で、気が強い品子を追い出すことに成功したものの、福子はだらしがない女で、暮らしはじめたところで庄造は好きなのかどうかもよく分からない。
庄造が無償の愛をただただ注ぐ対象は、猫のリリーである。



追い出された品子といえば、夫婦でいた間はいつも二人の間に居たリリーが憎らしかった。しかし、いずれだらしがない福子に嫌気がさして自分を家へ迎え入れるだろうとの目論見から、庄造との関係を繋いでおくためにも、せめてリリーを下さいと哀れな嘆願。



芝居を打った甲斐あって、庄造夫婦からリリーを連れてきた品子、あんなに憎かったはずのリリーが可愛くなってきたのはどうしてか・・・ 
なぜ自分はこの可愛らしさに気づかなかったのか、それこそが家を出された理由だったのではないか。自分にこんな愛情があるとは思わなかった・・・



リリーを手放した庄造、受け入れた品子はリリーを可愛がる自分の愛情に驚くのでした。



とにかく猫への愛情の偏りぶりが、そうそう、と唸ってばかりの核心をつきます。
庄造、品子ともに自分を本当に理解してくれるのは、この猫ばかりと話しかけ世話をする姿、他人とは思えない猫バカぶり。
人間への愛は損得、世間、自己主張、と上手く行かないことが多いのに、猫に対しては奴隷である自分の姿こそが本当の自分と感じるほどの低姿勢に。



人を、女性を良く見ている作家だ。いまさら気づいたけど、そのうち大作も読んでみたい。







『ウィーントラベルブック』塚本太朗

ISBN:978-8085-8523-5 2009年 東京地図出版 1600円



☆☆☆☆



ドイツ雑貨店マルクトのオーナーでもある塚本さんが、ウィーンへ取材旅行。探して見つけたお店やアーティスト、会社(カメラの「ロモ」とか)などを紹介。



はー、ウィーンに行きたい!行きたくなります!



観光ガイドは「~歩き方」でチェックして、こちらは蚤の市、リサイクルショップ、ステキカフェ☆、手芸店、などなど。オトメセンサーの針がびゅんびゅんくる可愛いものをチェック。
スーパーのオリジナルブランドや、老舗のスウィーツも抜かりなく掲載されてます。



いけなくても、ぱらり眺めているだけでわくわくしてきます。





2009/09/11

『オバマ・ショック』越智通雄 町山智浩

ISBN:978-4-08-720477-3 集英社 2009年



☆☆☆☆



オバマ大統領がショックなのか・・・と思い手に取ってみた。新書だからタイトルにあまり意味はなかったのでした。



アメリカという国がたどった政治的視点からの歴史、2大政党の支持者層の変化と、選挙戦術が中身の半分を占めます。オバマとは直接関係ないけれど、アメリカ史なんて全然知らないので、分かりやすくまとまっていて読み甲斐あり。



さらに歴史のなかでアメリカ人が「土地」をどう自分のモノにしてきたか、を示しながら、サブプライムローン問題が起こった経緯について語っています。市民にとってのアメリカン・ドリームは家を持つこと、という見方は新鮮でした。マイ・ホーム。



土地や家屋の価値が今まで下がったことがなかった、って!日本のバブルの話は耳に入ってなかったんでしょうね。単に金儲け目的かと思っていたけれど、政府からの老後の保障がないから、手を出したというのが大国アメリカの別の顔です。



アメリカ在住の町山氏の実体験も語られ、日本人で、コネもないのに、もどんどん貸そうとしてたという状況が挿入されているのも、対談ならではでしょう。



そしてこうなったアメリカが「オバマ大統領」選んだ理由、というのが最終的に語られます。



オバマはアフリカ系アメリカ人の代表ではなく、自分の民族アイデンティティがどこにあるのかが確かでない(今のアメリカに増えている)アメリカ人として、新しい大統領と言えるのかも。
疲弊して、行き詰ったアメリカを外から=アウトサイダー、やってきて助けてくれるスーパーマンに重ねて越智氏が話すのは、大統領選で涙を流す人たちの映像と合わせて考えると納得します。その期待が裏切られたと感じたら、どうするんでしょうね。





『勝てる読書(14歳の世渡り術)』豊崎由美

ISBN:978-4309616520 河出書房新社 2009年



☆☆☆☆☆



14歳のときにこういう案内本を読めていたら、もっと生意気ないい感じの子になったかもと思わせてもらった。35歳でも、もちろん楽しいけど。



世界は広い、色んな人がいて、考え方も行き方もいろいろあって、その一端を感じられる読書ってやっぱり楽しい。震える。



いわゆる教科書的な良書(と言われているもの)ばっかりのホコリ臭そうなものなんて、最初から興味ないし。だいたい、読みたい!って思わせるような書き方してません。



それから、博覧強記の素敵な文系おじさまとかがすすめる本も、なんだか凄すぎて、やっぱり自分が読みたい気にはなれない。



そんな案内本の世界に、教養系でもなく、知性高すぎでもなく、思わず読みたくなってしまう本をたくさん紹介してくれているのがコチラでした。
自分の星座をつくろう、ということで「デス座」「新訳座」「キモメン座」などと分かれています。



新旧おりまぜてあり、トヨザキ氏がどこに興味を持っているのかを読むと、私も引き込まれるものがたくさんありました。





2009/08/31

『電波男』本田透

ISBN:4-86199-002-5  2005年 三才ブックス 1500円



☆☆☆☆



よかったっていうんじゃなくて、よくこんなにたくさん書いたなぁで4つにします。熱意を感じます。



オタク(キモメンとも同義語で使用してます)な「俺」の愛を求める叫びが400ページにわたって展開。
80年代頃より恋愛至上主義が世間に広がり、結果、恋愛資本主義の時代が到来。
女性は金のあるイケメンを恋愛ヒエラルキーの上におき、オタクたち金もなくブサイクな男を人間以下のカテゴリへ落とした・・・ああ涙の物語。うんうん、それは人間を一面でしか見てないとお怒りなのはごもっとも。



ただ恋愛至上主義、というのは理解できたんですけど、後半さらに熱弁をふるう「萌えレボリューション!」は私には腰が引けちゃったのでした。



男を金と顔でしか見ない女性には、女を性的欲求のはけぐちくらいにしか見ない最低のDQN男ばっかりだー! でもキモメンは本当の平等の愛を求めるがゆえに、いつもそんな女性に馬鹿にされてしまう・・・。



そうして馬鹿にされると殺人を犯したり、暴行してしまう最低の人間になってしまうところを救ってくれるのが!
「萌え」。



まず、人によって「萌え」の対象はさまざま。相手を選ばない。
二次元の世界の子に「萌え」た場合、その子は決してあなたを裏切らない。
ので、みんなが脳内でピュアな恋愛を繰り広げていれば、暗黒面に落ちることなく平和が訪れるのです。



・・・これはこれで、あまりに純愛を求めすぎる繊細な要望だなと思うので、おおそうだ!とはならないものの、私も脳内劇場を持っているので、平和になるというのは1票いれてもいいかも。
現実世界が殺伐としているこのごろならば、心の幸福をもたらす「萌え」をさらに普及していくのも手なのか。





2009/08/16

『プロジェクト鹿鳴館!ー社交ダンスが日本を救う』鹿島茂

ISBN:978-4-04-710191-3 角川書店(角川Oneテーマ21) 2009.5 705円



☆☆☆



日本を救う、とは結婚率低下、出生率低下、を舞踏会によって救おう!というプロジェクトを「月刊現代」で行ったもののまとめ。



鹿島先生が目標とするものは、知り合ったばかりの男女がダンスというシステムを介して、肉体的、精神的な交流をもち、出会の場とする。本当の意味での「社交」目的の「ダンス」。つまり、競技部のように完璧に踊れなくても、ある程度踊れれば楽しく参加できるものを目指すのです。



編集者たち(結婚したいが相手がいないと嘆く女子が多いと著者はいう)を中心に、最終的に三井倶楽部を借りて黒塗りのハイヤーで正装した男女が集い、楽しく出会いの場となった当日までを追ったもの。



日々、仕事場の目の前で社交ダンスが繰り広げられているので、興味深々で読みました。
現在、私が「社交ダンス」と聞いて思い浮かべるのは、中年以上の方がミピンク色のもやを醸しながら踊るもの、と、男女というか、アスリート?という感じの競技ダンス。の二つがあるんですが、どうしてそのようになってしまったのかも分かります。



社交ダンスを習いにいくエピソードの合間には、日本における「社交ダンス」の歴史が挿入されていて、そちらのほうが面白く読めます。



外国との外交に必要だった舞踏会というものを井上馨が奮闘した明治の鹿鳴館時代に取り入れ、太平洋戦後直後のGHQとの憲法草案での天皇制に関する駆け引きにダンスパーティを使ったこと、三島由紀夫の時代を経て、現在まで。



お相手が紳士で踊りが上手なら、ダンスも楽しそう・・・・かな。ドレスは着てみたいもの。









2009/07/18

『島田教授の課外授業』島田雅彦

ISBN:978-4-579-30428-8 2009年 文化出版局 1300円



☆☆☆☆



『ミセス』2005.6~2007.12月号掲載の「島田雅彦の母親のための課外授業」などを再構成したもの。



思春期、親子関係、教育の悩み。経済問題、人間関係、家庭生活。そして母親自身の問題・・・生きがいについて、年齢を重ねること、幸せについて。



社会人としてまっとうに生きるにはどういう考え方をすべきか?を語っています。



完璧な環境を用意したと思っても、子どもが思い通りに成長するはずもなく、結局は自分で自分を愛し、周囲との関係を築いて、その子なりの幸せをつかめるような体力をつける手助けをするだけということ。



実際、子育てしていると毎日が大変なんでしょうが、たまにこういう基本を見直せるようなアドバイスをみるのは効果がありそうでした。



最終的には子どもの心配より、自分はどうなの?っていうことですね。手ごたえのある納得のいく生活をしている親を見ていれば、それなりに子どもは育つとのこと。



各相談の最後に、島田先生の文士コスプレ・・・やら、釣堀休日を演出したお写真が入っているのがス・テ・キ。
こんなに美☆おじ様なのに、世間的にはどうなんでしょう。小説も面白いと思うんだけど。