2010/08/06

『天国旅行』三浦しをん

ISBN:978-4104541065 新潮社 2010年



☆☆☆☆



「死」に際して・・・テーマにした短編集。死と、愛情。



全体としては、ロマンティック度が高いので、三浦しをんのこのロマンティック加減の出し方がこの先も楽しみ。楽しみにしているので、ぜひ愛の暗黒面も開花させていただきたい。



黒い夢の話、好みでした。生まれ変わっても、男にだまされるなんて、黒いですね。でも、人間の同じ穴に陥りがちな愚かな面が書かれていて好きでした。



今は、まだロマンティックな物語の筋を、照れ隠ししているような言葉で進行させていっている。照れ隠ししてるのは作者ではなく登場人物のほうで、それが登場人物たちの奥ゆかしさでもある。普通の人々の愛情の物語が並んでいます。



それはそれで、気持ちよく読める。けれど、短編ではうまく切り取れ切れていない感じがしました。細部を書くが、紙幅が足りていないという感じです。





『虫目で歩けば』鈴木海花

ISBN:978-4-86020-386-3



☆☆☆☆



虫は好きではないです。特にチョウチョ・・・とセミがいやだ。ああ、いやだ。腹の感じがいやだー。



しかし、こちらの虫愛ずる姫さまの本は虫への愛や興味が素直に読めて、楽しかったです。確かに、図鑑で見てるだけならきれいな種類もいるし。あと、虫をじっと見てる著者の姿も可愛いの。



手軽なだけに、画像が小さいのが難点。苦手な人にこそおすすめな1冊。



ボディが硬い虫はそんなに嫌いではないので、散歩しながら虫を探すようになっちゃいました。テントウムシは虫と呼びたくないくらいに好きだし、そういえば蜘蛛も嫌いではなかった!



興味を持ってさがすと、可愛いような気さえしてくるから驚きです。まだ、「気がする」レベルですが、身近な自然の一部なのに素通りはもったいないと思わせてくれました。





2010/08/01

『蝦蟇倉市事件1』道尾秀介、伊坂幸太郎、大山誠一郎、福田栄一、伯方雪日

2010年 東京創元社 ISBN:978-4488017354



☆☆★



蝦蟇倉市で次々と起こる不思議事件のアンソロジー。いちおう、前の作家の作品の内容を受けているようです。緻密な連作などではなく、ざっくり「なぜか不思議な事件が起こるんだよねー」という感じ。
事件は起こるけど、謎解きの内容でおおっと唸ったのは伊坂幸太郎くらいでした。



これに1785円って・・・・文庫でいいよう。





2010/05/09

『奇界遺産』佐藤健寿

ISBN:978-4-7678-0898-7 2010年 エクスナレッジ



☆☆☆☆



前作(2008年)『X51.ORG THE ODYSSEY 』の刊行以降に訪れた世界数十カ国の取材地から厳選し、写真集として集成したもの。



奇態、奇矯、奇傑、奇物、奇習、奇怪のカテゴリ別に各国の奇妙な風景、奇妙な文化、奇妙な人・・・を紹介してくれます。



「奇」と言っても、異文化からの目線によって「奇」とされているのか、当事者たちが「奇」を求めてこうなったのか。気になるところ。長年、数百年と続いたものならば、現在まで引きついだ子孫たちはどう思っているのか? 
著者が「奇」と名指しているだけで、取材はしていても当事者へのインタビューはほとんどないのが、これだけ面白いものを集めているのにもったいなく、もどかしく感じます。



ひとつひとつ取材結果を乗せるか、トピックスの目次だけにしておくか、ということだろうけれど、どういう気持ちでこのような風景を作り出したのか聞いてみたいものです。







2010/04/29

『おみごと手帖』中野翠

ISBN:978-4-620-31965-0 2009年12月 毎日新聞社



☆☆☆





2008.11~2009.11『サンデー毎日』に連載したものに、書き下ろしなどを加えたコラム集。



麻生太郎がまだ首相だったころから、民主党が勝ちまくったあたりまでの期間でした。WBCでのイチローの「持ってる」ヒットも。
個人的な目線から見る世の中ということで、一年分が本になると読んでます。



怒り方に年季が入ったせいか、つぶやき気味になっていることが多い。愚痴っぽいつぶやきも。やさしさとか、きれいなものへの気持ちも、昔に比べると素直でまろやか。それが最近の中野翠の気分なんでしょう。



巻末には歌舞伎座の取り壊しと建て直しについての嘆きが。あんなつまらないビルを後ろにつけるなんて、ひどい話です。パリのオペラ座みたいに、そこへ行くこと自体が喜びになるような建物だったのにー。私も同感でした。





2010/03/27

『オペラ・シンドローム 愛と死の饗宴』島田雅彦

ISBN:978-4-14-091142-6 2009年 NHK出版



☆☆☆☆



「NHK知るを楽しむ この人この世界」2008年6月-7月放送「オペラ偏愛主義」の番組テキストをもとに大幅加筆、再編集したもの。



各時代を代表するオペラと作曲家の人物を紹介しながら、その作家、時代に活躍したオペラ歌手をあげ、さらに役柄と役柄にふさわしい歌い方、演じ方までもを読みやすく解説しています。私のような初心者向けにぴったりです。



「白タイツが1番似合う王子様」な歌手や、あくどい策略をめぐらす悪役の魅力など、著者があげた作品・歌手をいますぐ聴きたい!と思わせられました。
あがっていた歌手は、ほぼすでに亡くなっているのが寂しいですが・・・ 巻末のおまけでもいいから、現在、島田雅彦が気に入っているものをあげてくれたらなぁ。



自身が台本を書いたり舞台の演出もしていることもあって、物語のあり方への言及が文学者的分析でよかったです。
物語の変遷も、時代性との兼ね合いを絡ませて書いてあって、手元においてパラパラ見なおすのも良い1冊かと思います。さすがNHKテキスト。



「オペラに魅惑されたら最後、もう、あなたは戻ってこられない(帯より)」



心に栄養を与えないとね。きらきらとしていたい、のだそうです。島田先生は。幸い、私はまだ生の舞台を見ていないので、引きずり込まれてはいませんが、時間の問題って気もします。彼の興奮している様を読むだけで、うっとりしてしまうのだから。





『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』万城目学

ISBN:978-4-480-68826-2 2010年 筑摩書房



☆☆☆



小学校1年生のかのこちゃんと、猫のマドレーヌ夫人がご近所で元気に活躍したりする物語。



なぜ夫人かって、それはかのこちゃん宅に飼われている玄三郎の妻だから。猫には犬の言葉は分からないものなのに、玄三郎の言葉だけは分かるのだそうだ。



猫が登場するということで楽しみにしていたけれど、わりと人間っぽさが強い描き方でした。さすらってる猫っていう設定も、メス猫はあんまりしないんじゃないかなぁとか気になって仕方ない。



かのこちゃんはとても素直でかわいらしい女の子ではあるけど、こんなに1年生が賢いか?というのも気になりました。賢すぎではないでしょうか。



かのこちゃん=鹿の子・・・はすぐ気づいていたので、お父さんが鹿とお話できそうなのも(『鹿男あをによし』納得のお遊びです。



全体的に、これは何かの伏線になるのかしらと期待してしまうものがあったので、何年か割きにその後のかのこちゃん物語とか読んでみたいものです。