2008/01/28

『オーデュボンの祈り』伊坂幸太郎

ISBN:4-10-125021-9 新潮文庫(2000年 新潮社刊、文庫化にあたり改稿あり)



☆☆☆☆



新潮ミステリー倶楽部賞受賞した伊坂幸太郎のデビュー作。入院したときのために(いつ?)とっておこうと思っていたけど、映画化されまくりの伊坂作品を読まずにはいられず。



地図にも載っていない、誰も存在を知らない「萩島」に連れてこられた主人公「伊藤」が、150年間、閉ざされた島で起こるカカシ殺人を中心とする数々の殺人や謎を明かす物語。伊藤が探偵気取りじゃなく、巻き込まれ型なのが好印象だ。



未来が分かるしゃべるカカシ、反対のことしか言わない画家、唯一島の外に出て行ける男、もうひとりの島の外から来た男、カカシを恨んだ女、などなど。



最初、設定のファンタジー具合をどう捉えればいいのかしらと戸惑ったものの、伊藤が島に慣れるように私も慣れていった気がする。カカシがしゃべることについて、科学的(というのかなぁ?心理学的に、かも)ファンタジーじゃない見方が作品内に示されたときは、ガツン!とやられたーっという気分になった。程度で言うと『アクロイド殺し』くらい。



ところが、そうじゃない、という見解となってラストが明るく輝いて見える展開に驚きました。さわやかでした。ものすごく気になることはいくらでもあるけど、そんな重箱の隅をつっつくようなことはやめておこう、という気にさせてくれる終わり方で満足です。



ミステリとして捉えるなら物足りないけど(新本格な作品が好きなので)、総合力で4点。次も楽しみ。





2008/01/23

『音楽を「考える」』茂木健一郎/江村哲二

ISBN:978-4-480-68760-9 筑摩書房(ちくまプリマー新書058)



☆☆☆



プロフェッショナル(NHK)でお見かけします、脳科学者(意味はよく分からない肩書きですが、著者欄に書いてある)茂木健一郎と作曲家の江村哲二さんの対談。



茂木ちゃんといえば「クオリア」。そして、お2人は『脳とクオリア』という茂木ちゃんの著作を理解したうえで語り合っていたのでした。がーん、クオリア、が全くわかっていないので、どこで共感して語っているのかサッパリ・・・で、☆3つ。



仕方がないので♪『脳とクオリア』も読みかけー、こっちは難しいっす。



音楽というものが、西洋においては特に数学的な捉えかたをしてきたこと、美学でも最高位の美とされること、そこからさらに生まれた「現代音楽」をどう捉えるか?というクラシック音楽の簡単な歴史の部分は、実際に作曲している江村さんが話すと説得力がありました。
「現代音楽」もいかにもな「現代音楽」というジャンルになってしまったかも、とか。日本人はメロディがはっきりあるものを好むというのも、自分に照らすと「そうそう!」です。



でも、これら音楽を「美しい」と感じるのは何か?は、分かっていないと茂木ちゃんは言ってまして。ふーん、また、0から10までのレベルのものをみて、初めて10が10であることが分かる、とも。つまりジャンクフードの味しか知らない人に、採れたて新鮮野菜の味は想像もできない、というわけか・・・。



日本でクラシック音楽ファンが広がらない訳、についても語ってます。↑この説からいえば、そもそも日本人がクラシック音楽に触れる機会がほとんどないから、好きにも嫌いにもなれないということでしょうか。音楽ならラジオでイケても、「オペラ」なんて絶望的。私も演奏会形式でしか聞いたことがありませんし。



音楽の時間に、ちゃんと聞いたこともないですしね。子どもにこそ一流のものを見聴きさせて、最高であるモノサシを身につけさせるべきですよ! ね!


2008/01/19

『オカマだけどOLやってます』能町みね子

竹書房  2006年 ISBN:978-4812428917

能町みね子、2X才。オカマだけど都内の某会社でOLやってます。こっそり働きはじめて約3年。会社の人は誰もその正体を知りません。(竹書房)

☆☆☆☆



くすぶれ!モテない系』で笑わせてもらったので、こちらも読んでみました。この本の出版後100日くらいにリフォーム(性転換手術)をすることになっていたとのこと。現在は、戸籍も「女」になっているそうです。



イラストがちょこっと脱力系でかわいい。書いてないこともたくさんあるでしょうけど、オーエルになってからこの話題にはこう答える、とか考えたりしてる。「生理が軽い・重い」に始まって「制服のスカートがテカッた」とか。女子としての学生生活を捏造とは、涙ぐましい努力です。



これが女子か!とびっくりしてる箇所があって、改めて言われると「楽~♪」なんですね、女子は。重い物を持たなくていい、とか、上司には「悪いんだけど・・・お願い」って丁寧に頼まれたとか。サラリーマンも経験したからこそ身に染みるんだろうな。



自分の性を疑ったことがないので、そのズレに気づいたときは恐怖かもしれません。名前、年齢、性別、いつでも割りと書類に書くので、性別って根っこのIDですものね。



シリアスな問題を、さらさらっと、しかし真面目に書いてて素敵な本でした。



オカマってありますが、この場合はいわゆるオカマさんとは違いますね。分かりやすくこの表現にしたんだと思います。





2008/01/14

『小林賢太郎戯曲集』小林賢太郎

幻冬舎 2007 ISBN:978-4-344-01383-4



CHERRY BLOSSOM FRONT 345(ラーメンズ第11回公演)
ATOM(ラーメンズ12回公演)
CLASIC(ラーメンズ13回公演)



☆☆☆☆ (2段組のため改行が多くてやや読みづらい、のでマイナス1☆)



ラーメンズの戯曲集、DVDでは見てるので動きも大体分かりつつ、活字でも笑ってみました。動きが加わると、そりゃ最高ですが、言葉だけ見るのも禁欲的な感じ・・・?楽しい。



切ない系、ばかばかしい系、びっくり&ドッキリ系、いろいろあるけど、共有してるはずの言葉の意味がズレてたり、言葉と行動がズレていたり、そんな「ズレ」がなんとも言えない笑いを引き出します。意外とホロリとしたりするもの素敵な賢太郎さん~



バニー部の賢太郎さんがすっごく好きなんですが・・・手の美しさといったら、それだけで女子ノックアウトですよ!



2008/01/03

『鈍獣』宮藤官九郎

ISBN 4-89194-707-1 PARCO出版 2005



第49回岸田國士戯曲賞受賞『鈍獣』の戯曲本。
最後にキャストの生瀬勝久、池田成志、古田新太と宮藤との対談つき。女優さんたち、西田尚美、野波麻帆、乙葉のアンケート、最後に演出家の河原雅彦のコメントあり。



見る前に読んだほうが面白いかなと思い、先に読んでみました。
小説の映画化だと不満に思うことが多いけど、脚本を読むのは自分の脳内演出的で描いたのと、実際の公演とのギャップが面白い。ので、脚本を読むのはけっこう好き。どう考えても、実際の公演のほうが素晴らしいのだし!



本筋はわりに掴めるけど、1幕2幕の冒頭にあるコンビニのおばちゃんたち(当然、生瀬、池田、古田の3名が演じる)のとこが活字じゃ物足りなさすぎだ。江田の挿入歌部分もこれは活字じゃ面白くないのでした。新太が歌うの観たーい。



文字を追ってるだけでも、3人の妖しさがむんむんな感じ。いまだに謎ながら、古田新太の色気とか、成志のカッコよさとか、生瀬さんのつかみどころがありそうでないとことか。



殺そうとしても殺そうとしても死なず、憎しみももたれず(それどころか好意的態度)、そんな凸川が次第に少しずつ不気味さを増していくような感じでしたが。
ラストの「覚えてないわ」、覚えてないのか知らないのか、それもはっきりしないのって気味悪いな。誰を殺そうとしてるのか・・・ちゃんと分からなくて、コワイ。