2008/06/14

『佳人の奇遇』島田雅彦

ISBN:978-4-06-214005-8 2007年 講談社 



「婦人画報」2006年1月号~12月号連載



☆☆☆



「ドン・ジョヴァンニ」の舞台に今夜集まるのは、魅惑の歌声ながら本番で実力が出せないオペラ歌手、彼を舞台にあげれば成功報酬100万、で雇われたホステス、色男で絶倫を誇るマエストロ、クラシックファンの冴えない大学講師、彼に一目ぼれした女、彼女にアドバイスする占い師、路上デビュー寸前の男・・・などなど。



168ページの中篇で読みやすい。『ドン・ジョヴァンニ』の物語を比喩に人物たちの気持ちを語ったり、『ドン・ジョヴァンニ』の解説が挿入されたりで、気軽に読めるオペラ案内の側面もあり。聴いてみたくなる。



どん底の人たちが多く出てくるわりに悲壮感がなく、むしろからっと清清しい語りになるのが、島田雅彦風なのかしら? エッセイは時々読むが、熱くてクールで、という世間との距離感が小説でも見える気がします。



文章が水増しした感がなく、締まっているのも良かった。



☆NHK「知るを楽しむ」2008年7-9月 「オペラ偏愛主義」島田雅彦出演中☆



本人が素敵すぎるのって、作家にとってよいのか悪いのか・・・島田雅彦は生きてる日本の作家のなかでは1番だと思うんだけど。『ダ・ヴィンチ』のいい男ランキングがいまいち腑に落ちないのう





2008/06/07

『ザ・万歩計』万城目学

ISBN: 978-4863110090 2008年 産業編集センター



☆☆☆☆



マキメ学、小学生のころ(よく覚えてるなと感心)、大学生のころ、世界をうろうろ旅したとき、社会人の頃(工場の経理で、現場にも行ってたという)、をたまにアホアホ妄想を挟みつつ書いてます。



何となく、ひょろっとした青びょうたんのようなイメージだったけど、モンゴルに行ったりトルコに行ったり、ヴェネツィアでバックパックを盗まれたりと、ワイルドな人でした。
何もないタイガで、生きるために食事をつくり、食事を捕り、つくり。と、来るまでは雄大な自然に抱かれて・・・と生っちょろく考えてたことが、木っ端微塵に砕かれたエピソードなど、面白い。人間として彼らとマキメが違いすぎたらしい。



『鴨川ホルモー』から読んでますが、どんどん文章がかしこい感じになり、物語が骨太になってきてますね。京都を荒らしている森見登美彦氏に比べると、あくまでも男子!な作風が好ましい人です。登美彦氏は湿り気があるものね~それはそれで好きですが。



男らしい?というと、黒い稲妻・Gショック!ゴッキーとの戦いの歴史も印象深いお話でした。大阪よりも、東京はG軍団がうようよしてるのね。コワイ。ヤツらを前に、逃げるか闘うかの二者であるといい、もちろん男子マキメは闘ってました。私も闘う派。しかし、あまり想像したくないお話・・・。





『女子の国はいつも内戦』辛酸なめ子

ISBN-13: 978-4309616476 2008年 河出書房新社



☆☆☆



「14歳の世渡り術」シリーズのひとつ。



この本の前書きにあることが、すべてなんだよなぁと三十路にはよくわかります。でも、渦中にいて友達関係とか学校とか、そういうことに絡まれてる中学生が手にとって、これで少しでも気が楽になればいいよね、と思います。



つまり、無視されたとか、悪口言われたとか、そんなのどうでもいいことだっていうことなんですよー。全然、大した問題じゃないのです。
そりゃツライと思うし、↑今こんなことが自分に起こったらやはりツライですけど、嫌なら、そこから逃亡することも出来るし。



私は早々に女子的世界からドロップアウト、他人のことは気にしないことにしちゃったので、楽でした。内戦ばかりの紛争地帯から亡命。亡命先は・・・平和な女子大。 



内容は、女子世界のヒエラルキー、スポーツ系、普通系、オタク系、圏外? とか分けてそれぞれのメリット、デメリットを書いてあるのは、そうだよな、と。
それぞれでうまく立ち回るコツとか・・・ ただし半分冗談、半分本気と思って読むのがちょうど良さそうです。
それぞれが持つと良さそうな文房具まで。へぇ。



他には、アメリカの私学、公立、ドイツからの帰国子女、と、男子、に「女子ってどうですか」と聞いてる章も。ここはちょっと作者の意見のため意図的に抽出したかも。



アメリカの子たちは友達づきあいがさっぱりしてて、差別はいけないことという建前があるからいじめはないとか。ふーん。ドイツでは、思ったことは言葉にしないと伝わらないとか。



ここも、日本が嫌になったら、世界に飛び出して行っちゃうのもアリ、と思わせられたら良いかもです。



たまにちょこっと毒を吐いてはいますが、けっこう良心的な14歳に向けての世渡りレクチャー。オトナはふーんと笑って、子どもは勇気をもらってください。





2008/05/23

『スピリチュアルにハマる人、ハマらない人』香山リカ

ISBN:4-344-98003-4 2006年 幻冬舎(幻冬舎新書4)



☆☆



ハマる、ハマらないかは個別すぎてタイトル先行だった。



香山さんは、これが本当だともいんちきだとも言うわけではなく、スピリチュアルブームについて、どういう社会、どういう流れがあって、かつ、どのような人々がスピリチュアル的なものを肯定して いるのか?との考察をしています。



なかでも人気の江原啓之氏については多く言及しています。 拝み屋だの、霊媒師だのといわれると拒否反応があっても、「スピリチュアル・カウンセラー」というとマイルドに。



精神医学では、コドモがある時期、ぶいぐるみとかタオルなどに執着するのを「移行対象」と言って、そしてオトナになってもぬいぐるみに愛着を持つのは、この守られていたいという願望の表れだと考えるそうです。
で、江原氏がまさに「トトロ」のように、丸くて優しくて、中性的なイメージなのも、受け入れられやすい要因になっていると。



彼はそんな柔らかな物腰で恋愛や人生相談をしているが、それは本当にしたいことへの布石というか、表向き、宣伝活動らしい。
本当は、物欲にからんだ話ではなく、魂の話からそれをより良き社会するために、おのおのどうすればいいのか、という話をしたいのだという。へえ。



しかし、江原ファンだという(多くは女性)ほとんどは、江原氏の社会的発言はスルーで、「私の恋愛どうなるの?」「私が幸せになるにはどうしたら?」といつまでも聞き続けているとの指摘です。



で、香山さんの筆は、内的世界「私」の幸せだけを願う人々とは?という考察へと流れます。



自我が脆弱になっている(らしいです)ところへ、それはあなたのせいじゃなく、前世の問題だ、とか、起こっていることすべてがあなたのための出来事だ、とか言われるとツライことに耐えなくても良いと思え、それが気持ちいいからスピリチュアルなものが広く受け入れられている土壌なのだということでした。



そんなに自分本位なのか、いまは! 反省しておきたい点です。



オウムの反動で、一時はこういうものは排除された感じでしたが、最近は疑うものとしてじゃなく、見えないものを受け入れることこそ評価される態度だという風潮です。科学で証明されないから、ないものだということもできないだろう、と。



科学者が世界をどれだけ見つけたのか・・・? 私はまだほんの少しだろうと(無責任に)想像しているので、もしかしたら霊だのオーラだのを数字で計ることができるようになるかもしれません。というか、科学的なモノサシではないモノサシが登場して、世界の見方を変える日が来るかもしれません。



と、思っているとちょっと楽しい。







『本日、東京ロマンチカ』中野翠

ISBN:978-4620318448  2007年 毎日新聞社



☆☆☆



サンデー毎日掲載の「満月雑記帳」1年分をまとめたもの。



枯れた感じを好みつつ、毒気のあるものも好き、といういつものバランスが全体にある。



読みなれている作者のものだと、思ったとおりの方向に話がいったり、怒るポイントがそうそう、と確認できたり。前よりも、徐々に、怒らなくなってるような気がします。怒ってても、キイーッって感じじゃないのね。



意外性はないが、中野翠目線になりたいときにささっと読むと楽しい。一年の出来事を振り返るにも良い。





2008/05/18

『猫島ハウスの騒動』若竹七海

ISBN:4-334-07635-1 2006年 光文社



☆☆☆



久しぶりの若竹七海。葉崎市シリーズ、探偵・葉村晶シリーズともども大好きな作家のひとり。



これは葉崎市シリーズ、に近い。



舞台は葉崎市の離れ小島、通称「猫島」。入り江に「お腹をナイフで突き刺された猫のぬいぐるみ」が置かれているのを発見したところから、台風接近中の猫島に様々な事件勃発。そして、それらの大小の事件はどんな関連があるのか? 



殺人事件が起こるけど明るく楽しく謎解きが進みます。
随分前に読んだ葉崎シリーズの2冊『ヴィラ・マグノリアの殺人 (光文社文庫)』『古書店アゼリアの死体 (光文社文庫)』も読み直したくなりました。



明るい雰囲気にまぎれて、実はけっこう毒舌なのが若竹七海の持ち味だと思うのですが、今回はそれほど毒はなし。ほのぼのでもないけど、主人公らしき高校生の女の子、その祖母と友人のおばちゃまたちが元気なのが、スカッとします。



猫が活躍する点については、うーん、どうだろう、これ。事件が大きく展開するところで大勢の猫が活躍しますが、それって誰かが(猫か?!)がそれ!と命令したのか、あるいは人間の思惑と無関係にただ動いたのかがはっきりしない。



頭脳明晰な探偵猫が活躍してもいいし、何も考えてないただの猫なのに結果的に解決になった、でもいいのですが、どっちつかずのくせに大活躍してるのが腑に落ちないのでした。







2008/05/06

『52%調子のいい旅』宮田珠己

ISBN:4-947702-50-5 旅行人 2003年



☆☆☆



「ゴージャスなミックスパーマにしましょう」の一文で、笑い転げた。←日本ブームの台湾でみつけた、今どきの日本語をマスターするための本の例文。これは読んでみてほしい~



まるで一般的な旅行記(●日、何をした、何を食べた・・・など)とは違う話の進み方で、全然実用的ではないけれど、何だか楽しい。旅の話と思わせておいて、サラリーマン時代の話になってたり、どこに着地するのかわからなくて漂々としてます。



どこまで本気なのかわからないテンポの良い文章で、楽しかったー。



ジェットコースターに乗りまくるだけのツアー『ジェットコースターにもほどがある』や、巨大仏を見て歩く旅『晴れた日は巨大仏を見にもしているようなので、また読んでみたいと思います。