2007/12/24

『ホームレス中学生』田村裕

小説じゃないんだ、って読み始めて気づきました。ポイントになるエピソードごとに素直な気持ちで書いたような文体で、エッセイみたいなつくりでした。



タレント本でしょ~、とバカにして読み始めたら、これが経験してないと書けないわ!というもので。



たとえばリアルで必死すぎる空腹感が、中学生にとっては将来より「空腹」だったんだな、と納得したり。ダンボール食べてみたのか・・・ それはマズイだろう。



小5のときにお母さんを亡くしたことを、中学生になって(だったと思う、数年後に)初めて現実のこととして受け止められたというくだり、田村さんが本当に経験して書いたのねと思う話です。大きなショックを、何年かかけてやっと受け止められたんですね。こうやって文字にして出版することも、気持ちの整理がつけられているってことだろうし。



親戚を頼れなかった事情があったらしいが、とにかくびっくりなのがお友達の家族の活躍だ。状況を聞いて、お金を出し合ってアパートを借りて、生活保護の手続きもして、何て素晴らしい人だ・・・。人情に篤いってすばらしいー。



とにかく田村さんは人に恵まれているのが驚き。本当に困ったとき、ちゃんと誰かに助けてもらっているの。早くに亡くなったお母さんの愛と、本人の素直さの賜物か。人には優しく、と強く思う次第です。
江原さんとかなら、「お母様が守ってくださってますよ」って言うに違いない。



しかしお母さん、とあまりに素直に書くのは恥ずかしいかと思うのですが、いいのでしょうか。
大人なら「母」って書いてほしい。ずーっとお母さんが好き、素晴らしい、偉大だった、と絶賛するのは素敵なことだけど、他人に「お母さん」って言いふらすのは私はいやなんだよー。



ところで、「麒麟」というお笑いの方なんですが、芸してるところは見たことがありません。 この世界には疎い。 





2007/12/22

『裁判官の爆笑お言葉集』長嶺 超輝

爆笑っていうのは違ったのだけど、面白いなぁというのが感想。



あまりに裁判について知らなさ過ぎるんだろうな、とやっと気づいた今日この頃。法律があっても、結局人間が決めることだからズレもあるし、感情的になってしまうことだってあるかもしれない。だったら、機械に判断してもらえばいいわけですから。



自分の考えをあまりに前面に出すわけにもいかず、かといって決まったとおりにいうのもはばかられる、そんな板ばさみから生まれる言葉はドラマだった。



見開き、片方には「お言葉」と事件の概要。もう一方には、作者からのコメント。なかなかサクサク読めて良いです。



裁判員制度もスタートすることだし、こういうあたりから慣れておくのも必要かも。





2007/12/18

『絆のはなし』伊坂幸太郎・斉藤和義

起点は伊坂幸太郎が「斉藤さんが好きだ!」と言いふらしてたこと。それを聞きつけた関係者が伊坂幸太郎の小説に斉藤さんが歌をつくる、というこれぞコラボ!を提案し、実現したあたりの対談。



でも、斉藤和義にラブラブな伊坂幸太郎、まんざらでもなく楽しそうな斉藤さん。男ふたりのめろめろ対談だった。焼けるーっ!



冒頭に二人がお散歩してる写真が何枚かカラーであるんだけど、これがぱっとしないお二人なのがまたいいです。
私は伊坂さんの小説は入院したら読もうリストに入れて取ってあるので、まだ『陽気なギャング~』くらいしか読んないけど、それでもオーラのないお二人には笑いました。素敵すぎ。
せっちゃんもねー、歌えばものすごいセクシーですが痩せたのも相乗効果で心配になる風貌だし。



文庫化されたあたりとか、古書店にあったら買ってもいいなと思いました。かわいらしくてたまらない対談ですからー。









2007/12/12

『有頂天家族』森見登美彦

☆☆☆☆



2007 幻冬舎、ISBN 978-4-344-01384-1



久しぶりに、読み返したいと思う小説だった。登美彦氏の文体がかなりお気に入り。やり取りの言葉が楽しいのって貴重だもの。村上春樹以来かも(比喩にめろめろだった)。



京都を舞台に、偉大な亡父をもつ狸兄弟と、タカラヅカ病に罹患している母狸。主人公は3番目兄弟、矢三郎。・・・化けるときはいつも「腐れ大学生」になっているので、それくらいの年かしらと思いつつ読んでしまったけど、どうなんでしょうか?狸の年齢って。



男兄弟にしては、腕白さが足りないというか、わりに非暴力な兄弟。長男の、しっかり者のくせにココ1番に弱いところとか、兄弟の性格描写がうまい。自分が長女なので矢一郎兄ちゃんに肩入れしてました。クールを装って熱い次男、阿呆に生きてる三男、びびりだけど素直な末っ子。かわいい。



矢三郎は、普段はほけっとしているようでいざという時は踏ん張れる頼れる三男。これがふわふわの小さい狸がやってるのかと思うと、ますます愛らしいです。



反抗期とかあったのか?というくらいのイイコ揃で、それがまた登美彦氏っぽい世界なんでしょう。親への100%の尊敬と愛情、そして兄弟愛。それもファンタジーの一部として受け入れておけば、愛にあふれた世界に多少お尻がむずむずしても受け入れられそう。



父の弟でもある宿敵、夷川早雲、息子の「金閣銀閣」の阿呆兄弟のあほあほぶりも笑えます。狸ということで、すっかり脳内ではジブリの映画になったくらいの活劇として読みました。



がっちりリンクじゃないかもしれないけど、『太陽の塔』に出てくるものとゆるく繋がっているような。あああ、だからまた読みたくなっちゃうんだ。うまいな!



狸や人間を軽蔑してる風のくせに、弁天ちゃんに心うばわれて天狗の威光を地に落とした赤玉先生(如意ヶ嶽薬師坊・・・という立派な名前もある)のダメ男ぶりも、登美彦氏の作品に共通の「素敵な乙女に腑抜けになる」状態。
10年くらいは腑抜けたままかもね。そのうち、しっかりと手を繋いで向き合ってくださいませー。



※最後のページに「赤玉先生の御令息、大英帝国より堂々帰還」、幻冬舎の『パピルス』15号から連載開始だそうです。英国紳士なんだろうか? 赤玉先生、御令息、弁天の戦いが楽しみ。





2007/12/04

『グアテマラの弟』片桐はいり

☆☆☆☆



わたしのマトカ』では大笑いで、腹筋まで痛めてしまった、片桐はいりのエッセイ2作目。



前回はお仕事から派生したフィンランドでの抱腹絶倒の旅エッセイだったが、今回のテーマは家族。中米のグアテマラで結婚し、家族を持って生活の根を下ろした弟さんと、はいりさんからみた片桐家がテーマ。



前もびっくりしたのだけど、はいりさんの目線がとてもオトナなのが素敵。社会人として、とか狭い意味のオトナじゃなくて、人間の器が大きくて、大胆だけど真面目で、でも遊べて、と、奥行きのある素敵な人だと思わせます。



半ば音信不通だった弟と、faxを自らグアテマラに持っていったことをきっかけに連絡をし始め、さらにPCのお陰ですっかりマメに連絡しあうようになったとあって、ネットの普及の良い面だよなぁとしみじみ。お父様の体調が悪くなったときも、姉弟で24時間体制で様子を確認していたとか。



しめっぽくもなく、ほとんど未知の世界に近いグアテマラをいかにも異国らしく書くのでもなく、自分の目で見て感じたことを綴っているのも、良いところでした。





2007/12/01

『秘密の花園』三浦しをん

☆☆☆☆



意外と、真面目な小説だったということで、☆4つ。



傍目には、完璧に自分の世界を築いて高みに生きているような子が、恥じながらも嫉妬心を燃やしたり、自分だけ特別だと思ってたのに、大勢のうちのひとりにしか過ぎなかったと気づいた衝撃とか。
そんな大なり小なりだとしても、自分の高校時代(10代)に経験したような、そしてすっかり忘れていた敏感な感じを思い出させるお話でした。



作者の目線が、振り返るとこんなことあったな、という立ち位置だったので、生々しくなりすぎないものになっているのが、ちょうど良かった。



こそこそうまくやっている子より、わかってるフリで諦観してるフリだけど、実は熱く心が揺れるような、まっすぐな子がいいな。





『ゾラ・一撃・さようなら』森博嗣

Zシリーズとは関係ないようでした。



☆☆.5



ワケありそうで謎ありの美しい女性が、探偵に探しものを依頼。探偵はそれを手に入れることは出来ず、美術品を保管している男は殺される。そして心奪われたその美女は世界的に有名な殺し屋、ゾラ・・・? だった。終わり。



美女にちょっと翻弄されたり、他の裕福な美女からも誘われたり、元妻にも優しくしてもらったり。ハードボイルドっぽいのだけど、そうなると主人公に色気が足りない。犀川先生のほうがよっぽど色気があるかも。



探し物の「天使の演習」、エンジェル・マヌーヴァ(『魔剣天翔』に出てくる)と重なるのかしらということがとても気になる。読み直すかー。簑沢氏も、どっかで読んだと思うので、これも探してみよっかな。