ISBN:978-4-591-10875-8 2009年 ポプラ社
☆☆☆☆ こんなにお手紙書いてたら、研究どころじゃないよ!
「一筆啓上。文通万歳!
京都の大学から、遠く離れた研究所に飛ばされた男子大学院生が一人。無聊を慰めるべく、文通武者修行と称して京都に住むかつての仲間たちに手紙を書きまくる。手紙のうえで、友人の恋の相談に乗り、妹に説教を垂れー」書籍帯より。
能登半島でくらげ研究のため送り込まれた守田一郎くんが、半年少々の期間に書いたお手紙集。恋文の技術は習得できたのか?
お相手からの返事はなく、ひたすら守田くんが書いたものがお相手と時系列順に並べてあります。
手紙の相手は、京都に残る友人マシマロ小松崎くん、大王と呼ぶ美人の大塚先輩、以前家庭教師をしていた小学生の男の子、妹、そして恋文の相手伊吹さん。
お返事が書かれていないので、読み手は守田くんが次に書いた返事から推測していく楽しさがあります。
しかも、この相手はそれぞれゆるくつながっているので、小松崎くんとのやりとりで一部不明だったことが、今度は大塚先輩へのお手紙で判明したり。パズルみたい。
相手によって、文体が違いを見比べるのも楽しい。同じことを伝えるのに、微妙に変わってます。
どこまで本気かという内容のであっても、研究の行き詰り感や、大学を出たらどうしましょうという不安を吐露するお手紙も混じります。
自分を装飾しつつも、自分を客観視もしていくのが手紙の醍醐味でもあり。そのあたりの自意識のあり方もなかなかです。
モリミーは憧れのあの子を思って悶絶してるのを書くのがピカイチでしょう。
ダメダメくんと見せかけて、熱いハートがたぎってます。社会的、金銭的にはイケてなくても、人として魅力あふれまくりの好青年・・・(さわやか、とは違う)。
相変わらず甘酸っぱいモリミーのお話。へたれくんの奮闘を読める作品でした。
腹黒さが出ていないけれど、それはお手紙に守田くんが腹黒さを出さなかったと受け取ることにしました。ダーク守田くんも読んでみたいが、そういうのは投函されないのよね。
恋文とは、なにかの定型があるわけじゃなく。恋心があれば、恋文となる。技術を駆使しないほうが伝わる・・・ことを、膨大な手紙を書いて気づいたようです、守田くん。