ベニスに死す Death in Venice 1971年
監督/ルキノ・ヴィスコンティ Luchino Visconti
ダーク・ボガード、ビョルン・アンドルセン
★★★★
パッケージのイメージから私が考えていたものとは、かなり違う表現の映画でした。もっと作曲家のグスタフ・アッシェンバッハと美少年タジオが、関係を深めるような話だと思っていたの(『太陽と月に背いて』のような、地位のある年配者が若い男にたぶらかされる的な・・・)
こちらは、自信喪失の老境の作曲家がコレラの流行るヴェニスで、美しい少年を見かけます。彼は自分が追い求めていた「美」を見つけたと思い、哀しいほどに思いつめ、ひたすら妄想とストーキングをし、最後には輝く少年を見つめながらヴェニスにて死ぬ、というもの。
観光客でもっているヴェニスの、すでに没落感、たそがれ感があいまって、なんともきれいな画面でした。
主人公の作曲家は、小心者で、かつ自尊心が強く、女性ともうまく付き合えないような男、タフさもない。きもちわるいです。
きもちわるいけど、多かれ少なかれ完璧な美への憧れ、すでに失ったものへの憧憬の思いは、誰にでもあるもので、理解はできる。
本当に切ない主人公の哀れな姿なのですが、哀れなのに、滑稽でさえあるのに、なぜか画面はぎりぎり美しさを保っている不思議さがありました。
行動はきもちわるいけど、身だしなみはきれいだからか。老舗ホテルや周囲の家具、旅行客の衣装の美しさか。
それと、会話がほとんどないのがスゴイ。それでも、2時間あまりの間、飽きることはなかったのでした。ずーっとタジオを見つめ、君は美しい、愛している、などと心の声は流れるのですが、彼自体はじーっとサロンの椅子や砂浜のベンチに座っているだけ。コワイ! ずーっとタジオを見つめるグスタフをじーっと追いかけるカメラ、コワイコワイ。
でも・・・
妄想族としては、分かる! のであって。妄想にまみれて死ぬとシアワセなのだろうか、と思いました。そこで現実に戻っていけるのが、たぶん普通の人のたくましさでしょうが、彼は芸術家であるが故に、そこから動けなかったのですね。
これだけ美少年的扱いをされた、タジオ役の俳優のその後が気になり、ググってしまいましたが、この作品の影響は大きかったようですね。大人になってからは、まぁ普通にカッコいい感じ。
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