2010/03/27

『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』万城目学

ISBN:978-4-480-68826-2 2010年 筑摩書房



☆☆☆



小学校1年生のかのこちゃんと、猫のマドレーヌ夫人がご近所で元気に活躍したりする物語。



なぜ夫人かって、それはかのこちゃん宅に飼われている玄三郎の妻だから。猫には犬の言葉は分からないものなのに、玄三郎の言葉だけは分かるのだそうだ。



猫が登場するということで楽しみにしていたけれど、わりと人間っぽさが強い描き方でした。さすらってる猫っていう設定も、メス猫はあんまりしないんじゃないかなぁとか気になって仕方ない。



かのこちゃんはとても素直でかわいらしい女の子ではあるけど、こんなに1年生が賢いか?というのも気になりました。賢すぎではないでしょうか。



かのこちゃん=鹿の子・・・はすぐ気づいていたので、お父さんが鹿とお話できそうなのも(『鹿男あをによし』納得のお遊びです。



全体的に、これは何かの伏線になるのかしらと期待してしまうものがあったので、何年か割きにその後のかのこちゃん物語とか読んでみたいものです。





2010/02/12

『宵山万華鏡』森見登美彦

ISBN:978-4-08-771303-9 2009年 集英社



☆☆☆☆



京都、祇園祭宵山の一日をめぐる短編連作小説。どこか別の作品で会ったあの人も登場する手塚治のようなお楽しみもありながら、お祭りの持つ華やかさと禍々しさが溢れています。



馬鹿だから、とだまされる男の「宵山金魚」と騙す側の「宵山劇場」は、明るい学生ノリのモリミー節を。



不思議世界に少し怖い気分、別れの寂しさを盛り込んだ「宵山回廊」「宵山迷宮」は、『きつねのはなし』的なモリミー。



そして最初と最後にはさまれた姉妹の「宵山姉妹」「宵山万華鏡」が、うまく宵山の出来事をまとめています。



たぶん、これからもっともっと花開くと期待したくなるのが森見さんの作品。



これが傑作!とまではいかない理由は、初期に大暴れした森見節(文語調の語りくち)と、幻想的な物語とのはざまにあるからなのだと思います。



飄々としながら、幻想を語ってほしい、と期待をこめて4つ☆。





2010/02/08

『読まず嫌い』千野帽子

ISBN:978-4-04-885027-8 2009年 角川書店



☆☆☆



「野生時代」2008年5月号-12月号、2009年2月号-5月号掲載「読まず嫌い。名作入門五秒前」に加筆修正。



読んだことはないが、気になる。読んだような気にもなっている、「名作」そして「文学全集」。著者自身の読書遍歴とあわせて、現在の読者にとっての「名作」と「文学全集」を語る。



「名作」とは何か?いまや邪魔者扱いか風前のともしび・・・「文学全集」ってどういうものか?
文学全集に収録されたものと、されなかったもの。それは何が違うのか?



世界の文学をある一定の尺度(ってどんな尺度か。「世界」=「欧米」だし)で選んであるので、読めば文学が辿った歴史が分かる。らしい。本当か。



文学史に登場したりしなかったりする文学作品を、「恋愛」「学校」「犯罪」「恐怖」といったカテゴリでくくりながら、文学の歴史に言及しています。



名作と言われると敷居が高く感じる私、それを選んだ人がどういう考えで収録させたのかも気になるので、どうも押し付けがましい気がして手に取ったことはほとんどない。
けれど、長い時代を経て、今読むと、だらだらした感じがかえって新鮮だったり、都合よく気絶してばかりの主人公が面白かったりするのかもしれません。



テーマが「名作」の評論と、文学全集というものへの考え、の2系統に分かれていたのが残念。文学全集への章はさらりとしたほうが読みやすいように思います。





2010/02/02

『きりこについて』西加奈子

ISBN:978-4-04-873931-3 2009年 角川書店



☆☆☆☆



さわやかな読後感。底には「それを私も経験してきた!」という共感、ひとり戦っていたなぁと来た道を振り返って、そうやって今まで来たなとちょっとした自信を感じられる。可愛い、きりこちゃん。



関西の言葉で、「きりこについて」の生まれ、育ちかたを綴っていきます。その言葉のあり方がうらやましい。方言で書く文章が愛らしくなるって、作品から土地の薫りが届いてるようでステキだ。



両親のまっすぐな愛情をたっぷり浴びて、自分は「可愛い」と疑いなく育っていたが、ある一言をきっかけに、自分は「ぶす」で可愛くない!という自分への視点を植え付けれてしまう。



誰かと外見を比べることなんかしなくても、子供時代は「可愛い」と信じてた、私も・・・! 思春期、他人と外見を比べる目線を知ってしまった頃は、すごく居心地が悪いもの。
そして、それはそれ、全部の自分を受け入れることを知って、思春期は過ぎてオトナになっていきます。



外見が「ぶす」だなんて、どうにもならない悩みを、きりこが自分のなかに湧く愛情で乗り越えていく姿が清清しく。





きりこさんっ! おかあさんなんて面倒くさいもん、やらなんで結構さま!猫があるやないですかっ、猫があるやないですかっつって!



※小学生時代、きりこがママゴトで「おかあさん」役しようとしたときの、猫=ラムセス2世の叫び。そうそう、猫になれたらどんなにステキか! 結構さま!っていう語感がたまらないです。





2010/01/22

『メレンゲが腐るほど旅したい』メレ子

ISBN:978-4860203535 2009年 ブルース・インターアクションズ



☆☆☆



ブログ「メレンゲが腐るほど恋したい」http://d.hatena.ne.jp/mereco/の書籍化。



・・・・ネット環境あれば、ブログで十分大満足です。メレ子さんの愛と毒と下ネタまじりの素敵な旅ブログですが、本は少しお上品になってました。



わさおがらみで書籍化したのかもなぁ それにしても、勝手に「わさお」って名前にしてたのは本で知りましたヨ。





『乙女の日本史』堀江宏樹、滝乃みわこ

ISBN:978-4-487-80401-6 2009年 東京書籍



★★★



さよならおじさん史観! 神代の時代から昭和まで乙女を軸に歴史を見てみよう、というもの。



戦国時代、人質として嫁いだりオットを変えたり・・・、乙女も家のため頑張ってたのだ。おじさん史観だと、か弱い女性という見方になりがちだけれど、乙女も自由がないなかでも自分の新しい家族を必死で守って、夫と添い遂げたり、となかなかに凛々しい。



坂本龍馬の愛されレッスン、の章はタイムリー。大河での龍馬像に近かったので、最近の龍馬分析の傾向なのかも。女の扱いがうまい、とか女子に愛されるヤツ、とか。



コラム仕立て、女性誌ばりの衝撃記事、武将背比べ、イケメン度チェック・・・と楽しい読み物ページも多数。遊んでるようで、妄想はしてないのでちゃんとした歴史案内書です。
「おじさん史観」を知ってると、なお楽しい読み直しでしょう。



2009/11/12

『どんとこい、貧困!』湯浅誠

ISBN:978-4652078464 2009年 理論社



☆☆☆☆☆



「よりみちパン!セ」叢書のひとつ。少し前に雨宮処凛の本を読んだときに出てきてたので、10代向けなら噛み砕いてあるのではと思い、読んでみた。



貧困、という言葉が言われるようになっても、まだ遠い話のようにも思えます。ただ、私も官製ワーキングプアにほぼ該当する身分ゆえ、自分がどういう立場なのかも(今さらですが)知らないといけません。



生存することだけが「生きる」ことだろうか?と著者は訴えてます。友達と遊びたい、興味のあることにチャレンジしてみたい、おしゃれしたい、美味しいものを食べたい。それって贅沢なことじゃないよね、と。



人と繋がる、社会的な存在でいることには、多少のお金の余裕が必要。でも、一生懸命、フルタイムで働いてもそれが叶わないなんてどこかオカシイと思わない?



まさに、その通り。今まで私が幸せに生きてこれたのは親や夫のお陰だ・・・ありがとう。私にはイザというときに頼れるもの「溜め」があります。
でも、家族のたすけがないひとだっています。そういう人だって、同じようにもしもの時には、社会が安全ネットを張って助けるべきじゃないか、という主張です。



何をどうしたらもっといい社会になるのか。問題意識を発見すること、自覚することのために、適した本でした。



説明のしかたが、身近で納得できる例を使い、整理された説明で納得できる。
語る言葉も、読者と同じ目線から語っていて偉そうじゃない(活動家は何かと怖そうで偉そうに語るからいやだよね、と著者も言っている)
100%ORANGEのイラストも怖がらせなくて良い。



たくさんの人のなかにこういう考え方が広がっていけば、もう少し温かみのある社会になると思いました。