2012/01/01

『うほほいシネクラブ』内田樹

ISBN:978-4-16-660826-3 文春新書 2011年 文芸春秋



★★★★



第1章 2004-2008年まで読売新聞「エピス」に書いた映画評=うほほいシネクラブ
第2章 「街場の映画論」 著者のブログとその他の寄稿から映画関連のものを。
第3章 「小津安二郎断想」 小津安二郎DVDブックに掲載したもの。
第4章 1998-2003年 著者のHPに書き続けたもの。



アレ見た?見たよー、というときの映画の感想レベルから、構造論な映画評まで。映像作品を、文学的な言葉と評論方法で述べています。



映画は、映画について語られることを欲望しているジャンるである」との持論をお持ちだそうで、確かに映画もバックステージものが多いジャンルであるし、役者は役者であることを役柄と同時に表現しています。



わりと気楽に書いているものも多いので、気になる作品のタイトルを拾い読みしてもよし、じっくり映画論について思いをはせてもよし。



気に入ったのは、織田裕二がけっこう好き、と書いてたとこ。なぜかといえば、からっぽの役者であるから、と述べています。自己主張すべきものを持たない役者ではないか、との評価。私も織田裕二が好きで、からっぽ、のところでそういう言い方があったか!と膝を打った。
アレだけ濃いタイプなのに、思いっきり外面で攻めてくるのが気持ちいいのだ。



それから、レオナルド・ディカプリオが素敵だ、とも。先生、私と好みが似てるのかしら。



小津安二郎について大人の態度を学んだとのことだが、読んでいるとちょっとヤダなぁと感じました。昔の男って、きっとイヤだと思う。イヤなやつと思いながら見るのも一興か?



2011/12/11

『気狂いピエロ』

Pierrot Le Fou 1965年 フランス/イタリア



監督/ジャン=リュック・ゴダール
ジャン=ポール・ベルモント、アンナ・カリーナ



★★★★



痛々しい映画。



ただし、あまりに名作の誉れ高いので、自分の★が自分だけの判断なのか自信がなくなる。



ゴダールの映画を見るより先に、ゴダール解説を読んでいるほうが多いのは後から追いかける世代の(仕方のないことだ)かなしさよー。この時、アンナ・カリーナとは離婚寸前だったのだったかしら、そういう私生活の愛の終わりを前提に見てしまうのが、良いのか悪いのか。作品だけを見たいのに、どうしても介入してきちゃうなぁ



小さい頃に見た『勝手にしやがれ』では、日本人にはない濃い表情にカッコよさを見つけられなかったものだった。今ならわかる、ベルモントはいい男だ・・・
この作品中では、昔の恋人であるマリアンヌへ、社会的な自分を捨てた先の光明のように気持ちを向けていたのが、痛々しく切ない。



見終わって、物語の筋を思い起こし、まぁそういうことかな・・・と理解はできるものの、冒頭のベットで死んでる男がなんなんだよ、ってしばらく良くわからなかった。
死体が家にある女とパリを脱出、ガソリン代を踏み倒すにしても、後半の金の取り合いにしても、とても暴力的なことに、戸惑ったままでした。



どう考えても、マリアンヌは悪い女であって、かつ結ばれない相手だった。最期に謝罪したにせよ、彼が望んだ二人はひとつ、にはなれない絶対的にすれ違っている二人のまま。



ずっと、「ピエロ」って呼ばれるたびに、「オレはフェルディナン」と何度も答えるのも、これまた痛々しい。名前は世界からそれを切り離し、特定するものなのに、男の望んだもので自分を見てないことが、何度も何度も繰り返される。



赤い色、青い空、風の音と、盛り上がった途端にふっと切れる素敵な音楽。跳ねるように歩くマリアンヌに翻弄される喜び。



時間が時々、前後しているらしいスクリーン上の展開。



こういう断続的な動きそのものが、男の見ていた世界のよう。殺人や家庭を捨てたことも、マリアンヌとの世界の前ではかすんでいるらしい。



最期に自分の家に電話したのが、現実のそれまでの自分との接点へのコンタクトで、しかしもう戻れないことを確認してしまったともいえる。
ダイナマイトを頭に巻いて、導火線に火をつけてから、慌てて消そうとする手のショットに痛々しさもここまで来ると、確信犯ですね。ゴダール、どっぷり痛々しさを発散してくれよ!という気分になりました。





『マイレージ、マイライフ』

Up in the Air 2009年 アメリカ



監督/ジェイソン・ライトマン
ジョージ・クルーニー、ヴェラ・ファーミガ、アナ・ケンドリック



★★★★



解雇宣告人の仕事で年間300日以上を出張で全米の空を飛びまわっているライアン・ビンガム。密かな目標は1000万マイルを貯めて、飛行機に自分の名前をつけてもらい、フィンチ機長に会うこと。
「バックパックに入らないものは持たない」主義者で、同内容の講演も頼まれるほど。
すべて合理的で、あとくされなく、地上の重力から離れた生活を体現し愉しんでいるはずだった。



わざわざ出向かずとも、ビデオ電話で通告すれば出張費が抑えられる、と新方式を提案した新人を連れ、実際の現場を見せていくライアン。
そしてホテルで出会った同じような雰囲気の女性と出会い、軽い付き合いのはずが、自分に欠けているものは、愛!と、求めるように。けれども、それは彼女のつくっているファンタジーで、実際には夫や子どもがいた。



新人の愛を信じる若い心と、悟ったつもりのオトナの二人。



ハッピーエンディングとは少し違うラスト、中年男子の途方にくれつつ、次の一歩に踏み出したい表情のジョージ・クルーニーが良かった。
思うままにいかないことも含め、何か違うものに変化しようとしているのだから。
空港にいれば、全てを地上に置いて自由になれそうな気がする。ビンガムはそんな気分を味わっていたのかも。



出来るだけ、しがらみから遠く離れて生きていたいのは、私も同じ。彼の華麗な生活に憧れないわけではないけれど、誰かに必要とされていたいとも思う。



ジョージ・クルーニーがとても普通の中年男性に見えていたのが素晴らしい。オーラ消せるタイプなんだって気づいてませんでした。カッコいいけど、田舎町の結婚式にも溶け込めるのね。見直した。



ヴェラ・ファーミガ
30ちょっと、の年齢設定だったのだけど、ものすごく色気があって参りました。超美形じゃないのに、スタイルがいいのと、表情が少しまったりとしてて、素敵。



ほぼ同年齢だというのに、自分との違いにがっかりしまくり・・・





2011/10/10

『スーツの神話』中野香織

ISBN:4-16-660096-6 2000年 文春新書



★★★★



新書サイズで、男性のスーツの歴史をざっと知ることができる。現在のスーツに見られる特徴のもとになっているものが、過去のどこにあるかを特にピックアップしているため、論点が絞ってあって読みやすかった。



やや語り口調の文体が苦手な方もいるのかもしれないけれど、新書ならこれくらい楽しく読めてもいい。むしろ、ホントかしら・・・と思うくらいの調子のよさなので、確かめるためにいろんな文献にあたりたくなる効果があるくらい。



最終コーナーでは、日が沈まない大英帝国の時代の英国人が、かたくなに三つ揃えを着て熱帯地方でも暮らしたことも、世界中に現在の男性服=スーツが広まった要因とのことで、このガマンが大事という点がスーツのスーツたる理由だとのこと。



カッコよく魅せるのなら、スーツでなくても、各国民族衣装が美しいのになぁと思う今日この頃。やっと日本人もスーツが似合う体型になってきたとはいえ、羽織の裾が揺れるのもステキと思う。
スーツであることの理由を理解して着こなせば、もっと自分にひきつけて魅せることができそうです。



というわけで、女性にはスーツが似合わないのだな・・・と痛感。



あと、最近は細身なパンツのスーツが流行っているようですが、合ってない人のむちむち加減が目のやり場に困ります。私だけですか・・・ 多少のゆとりを希望。



2011/10/01

『時計じかけのオレンジ』

A Clockwork Orange 1971年



監督/スタンリー・キューブリック
マルコム・マクダウェル、パトリック・マギー、マイケル・ベイツ



★★★★



未来風の建物、衣装、美術。未来風でありながら世紀末風でもあって、今も色あせない。



暴力を誘発する、と当時は言われたようですが、ホームレスを襲って、レイプのため押し入って、金を盗む。ニュースでみかけるものばかりで、発表当時の社会ってまだ映画の影響力が強かったのかと不思議。



社会のルールと人権無視の行いにふける若者と、コントロールのために人権無視(同意をもらっているとはいえ・・・)に近い治療をする権力側の関係を軸に、主人公アレックスの語りで展開していきます。



美しいクラシック音楽の流れる後ろでは、暴力シーンが続く。ステキな「雨に歌えば」を歌いながら、アレックスが女性を傷つけている。
合わない二つが優雅なテンポで流れて、このズレがなんとも言えない世界をかもしているよう。



暴力場面と薬で引き起こす猛烈な吐き気を何度も体験させることで、暴力をふるうと吐き気に教われるようにする治療・・・ それは行為は矯正できても、心は矯正できてない。無気力な人間になるだけで。社会は都合のいい子羊を求めているのだね。



寝巻きみたいなぴたぴたおしゃれ着で反社会的行為を楽しんでいるアレックス、行いは非道なので全くもって嫌いのはずなのに、どういうわけか憎みきれないキャラクター。間違ったことをしてるのに、たまに筋の通ったことを言うとか、妙に説得力がある存在、主演のマルコム・マクダウェルをもってきて正解でした。



10代の設定なんですが、どうもガタイも良くて、10代に見えないのが問題といえば問題か。





『サガン- 悲しみよ こんにちは』

Sagan 2008年 フランス



監督/デュアーヌ・キュリス
シルヴィー・テスキュー、ピエール・バルマード、ジャンヌ・バリバール、アリエル・ドンバール、



★★★



フランソワーズ・サガンの伝記映画。デビュー作「悲しみよ こんにちは」で大金と名声を手に入れた18歳から、亡くなるまでを2時間少々で描く。



最初の結婚、2回目の結婚と出産、交通事故、薬物中毒、麻薬中毒。



駆け足ですべて同じ割合で配分されるので、サガンの人生は激しいが、観ている側には起伏が少なく観えます。サガンの内面には切り込まず、出来事をならべていく感じでした。



サガン役のテステューが痩せて細く、上目遣いなので、かわいそうな人に見えてしかたなかった。サガンの残ってる写真をみると、似せてるなぁと思うものの、フランス映画にありがちなケンカも多く(フランス人の言いたい放題の会話、私には落ち着かない)、サガンの心の推移もあまり見えないために、私は置いてけぼり。



衣装などは可愛くて、マネしたいものも多い。サガンの育ったブルジョワな雰囲気も、垣間見えていい。



男とも女とも恋をして、一緒に住むほど人恋しい様子なのに、うまく息子を上手に愛せなかったり、不器用で生活のバランスがうまく取れない人みたいです。
いずれにせよ、晩年に不幸に見えても、すべて自分で選んだ道。サガンが幸せだったのか誰にも分からないことか。





『サンシャイン2057』

Sunshine 2007年 イギリス



監督/ダニー・ボイル
キリアン・マーフィー、真田広之、ミシェル・ヨー、クリス・エヴァンス



★★



太陽に向かって宇宙旅行はやめておこうと思わせてくれる映画。



ツタヤ100円につき、失敗してるかもしれない映画を観よう推進中。



“太陽が消滅の危機、そこで地球人はマンハッタン島サイズの核爆弾を太陽に打ち込んで、新たな太陽を作ろうと宇宙船イカロスに載せ、出発した。
実は彼らはイカロス2号で、1号はミッション直前に消息を絶っていたのだが、水星近くでイカロス1号の救難信号をキャッチ。空気を作っている船内の農園が火災で焼失してしまったこともあり、1号救出のため航路を変えたところ・・・”



長い宇宙の航行のため、酸素と食料供給のために船内に農園をつくるというのは、すでにあるアイデア、でも、火災だなんてアクシデントがあったら、どうにもならないわね・・・ 人間が空気のないところで生きるのは、過酷な仕事だなと恐ろしくなりますねー。



ストーリーは間違いなく覚えてられるくらい簡単で、しかもオチにひねりはなく、人類は助かる(みたいです)
結果的に、最後に残ったキリアン・マーフィーが地球を救ったことになるんですが、こんなに全人類の希望を背負ってる(我らのバトルシップヤマト、帰るための酸素も船もなくなったので、カミカゼ状態です)のに、あまりミッション!という雰囲気がありません。イギリス人だからか?



それよりも、太陽=神の秩序、という構図が後半のメインであり、神の絶対的な存在に抵抗せず、受け入れたい、という欲求に陥るものが続出でした。
自らの意思で、太陽光に焼かれるものが・・・ え?
飛ぶまえから分かってたのではないかと思うが、そういう問題を解決するために乗務してるはずの精神科医が、最初に焼かれたい病に、日焼けして皮がむけてたぞ。



さらに、神と自分の問題になっていく西洋人のみなさんですが、ラストはミッション成功ですから、ん? となります。太陽も思うがままにできたの? ん?
問題にしてることと、ラストのバランスがちぐはくです。



さて、良かったところは、イカロスのデザイン。
太陽に向かうため、船体全体を大きなパラボナアンテナ型の傘でシールドしています。きれいで、面白い。
これが航路を変更したときに、傘のシールドの一部が破損して、危機に見舞われてしまう。それだけ、水星のあたりでは太陽熱が強烈だと。日焼けに弱い私には、恐怖・・・赤道に近づくだけで、焦げるもんね。



真田広之がキャプテン。
へーーー。真田さんは英語の発音に、いかにもな日本人訛りがない。
冷静だけど、柔軟性もあるいいキャプテンでした。しかし、アンテナ修理のときに、太陽に焼かれて塵になってしまいました。



キリアン・マーフィー。
なぜ彼がこれを選んだのか、さっぱり分からないのですが、物理学者の役です。全然マッチョじゃないけれど、学者にしては気骨のある役柄だった。