2011/10/10

『スーツの神話』中野香織

ISBN:4-16-660096-6 2000年 文春新書



★★★★



新書サイズで、男性のスーツの歴史をざっと知ることができる。現在のスーツに見られる特徴のもとになっているものが、過去のどこにあるかを特にピックアップしているため、論点が絞ってあって読みやすかった。



やや語り口調の文体が苦手な方もいるのかもしれないけれど、新書ならこれくらい楽しく読めてもいい。むしろ、ホントかしら・・・と思うくらいの調子のよさなので、確かめるためにいろんな文献にあたりたくなる効果があるくらい。



最終コーナーでは、日が沈まない大英帝国の時代の英国人が、かたくなに三つ揃えを着て熱帯地方でも暮らしたことも、世界中に現在の男性服=スーツが広まった要因とのことで、このガマンが大事という点がスーツのスーツたる理由だとのこと。



カッコよく魅せるのなら、スーツでなくても、各国民族衣装が美しいのになぁと思う今日この頃。やっと日本人もスーツが似合う体型になってきたとはいえ、羽織の裾が揺れるのもステキと思う。
スーツであることの理由を理解して着こなせば、もっと自分にひきつけて魅せることができそうです。



というわけで、女性にはスーツが似合わないのだな・・・と痛感。



あと、最近は細身なパンツのスーツが流行っているようですが、合ってない人のむちむち加減が目のやり場に困ります。私だけですか・・・ 多少のゆとりを希望。



2011/10/01

『時計じかけのオレンジ』

A Clockwork Orange 1971年



監督/スタンリー・キューブリック
マルコム・マクダウェル、パトリック・マギー、マイケル・ベイツ



★★★★



未来風の建物、衣装、美術。未来風でありながら世紀末風でもあって、今も色あせない。



暴力を誘発する、と当時は言われたようですが、ホームレスを襲って、レイプのため押し入って、金を盗む。ニュースでみかけるものばかりで、発表当時の社会ってまだ映画の影響力が強かったのかと不思議。



社会のルールと人権無視の行いにふける若者と、コントロールのために人権無視(同意をもらっているとはいえ・・・)に近い治療をする権力側の関係を軸に、主人公アレックスの語りで展開していきます。



美しいクラシック音楽の流れる後ろでは、暴力シーンが続く。ステキな「雨に歌えば」を歌いながら、アレックスが女性を傷つけている。
合わない二つが優雅なテンポで流れて、このズレがなんとも言えない世界をかもしているよう。



暴力場面と薬で引き起こす猛烈な吐き気を何度も体験させることで、暴力をふるうと吐き気に教われるようにする治療・・・ それは行為は矯正できても、心は矯正できてない。無気力な人間になるだけで。社会は都合のいい子羊を求めているのだね。



寝巻きみたいなぴたぴたおしゃれ着で反社会的行為を楽しんでいるアレックス、行いは非道なので全くもって嫌いのはずなのに、どういうわけか憎みきれないキャラクター。間違ったことをしてるのに、たまに筋の通ったことを言うとか、妙に説得力がある存在、主演のマルコム・マクダウェルをもってきて正解でした。



10代の設定なんですが、どうもガタイも良くて、10代に見えないのが問題といえば問題か。





『サガン- 悲しみよ こんにちは』

Sagan 2008年 フランス



監督/デュアーヌ・キュリス
シルヴィー・テスキュー、ピエール・バルマード、ジャンヌ・バリバール、アリエル・ドンバール、



★★★



フランソワーズ・サガンの伝記映画。デビュー作「悲しみよ こんにちは」で大金と名声を手に入れた18歳から、亡くなるまでを2時間少々で描く。



最初の結婚、2回目の結婚と出産、交通事故、薬物中毒、麻薬中毒。



駆け足ですべて同じ割合で配分されるので、サガンの人生は激しいが、観ている側には起伏が少なく観えます。サガンの内面には切り込まず、出来事をならべていく感じでした。



サガン役のテステューが痩せて細く、上目遣いなので、かわいそうな人に見えてしかたなかった。サガンの残ってる写真をみると、似せてるなぁと思うものの、フランス映画にありがちなケンカも多く(フランス人の言いたい放題の会話、私には落ち着かない)、サガンの心の推移もあまり見えないために、私は置いてけぼり。



衣装などは可愛くて、マネしたいものも多い。サガンの育ったブルジョワな雰囲気も、垣間見えていい。



男とも女とも恋をして、一緒に住むほど人恋しい様子なのに、うまく息子を上手に愛せなかったり、不器用で生活のバランスがうまく取れない人みたいです。
いずれにせよ、晩年に不幸に見えても、すべて自分で選んだ道。サガンが幸せだったのか誰にも分からないことか。





『サンシャイン2057』

Sunshine 2007年 イギリス



監督/ダニー・ボイル
キリアン・マーフィー、真田広之、ミシェル・ヨー、クリス・エヴァンス



★★



太陽に向かって宇宙旅行はやめておこうと思わせてくれる映画。



ツタヤ100円につき、失敗してるかもしれない映画を観よう推進中。



“太陽が消滅の危機、そこで地球人はマンハッタン島サイズの核爆弾を太陽に打ち込んで、新たな太陽を作ろうと宇宙船イカロスに載せ、出発した。
実は彼らはイカロス2号で、1号はミッション直前に消息を絶っていたのだが、水星近くでイカロス1号の救難信号をキャッチ。空気を作っている船内の農園が火災で焼失してしまったこともあり、1号救出のため航路を変えたところ・・・”



長い宇宙の航行のため、酸素と食料供給のために船内に農園をつくるというのは、すでにあるアイデア、でも、火災だなんてアクシデントがあったら、どうにもならないわね・・・ 人間が空気のないところで生きるのは、過酷な仕事だなと恐ろしくなりますねー。



ストーリーは間違いなく覚えてられるくらい簡単で、しかもオチにひねりはなく、人類は助かる(みたいです)
結果的に、最後に残ったキリアン・マーフィーが地球を救ったことになるんですが、こんなに全人類の希望を背負ってる(我らのバトルシップヤマト、帰るための酸素も船もなくなったので、カミカゼ状態です)のに、あまりミッション!という雰囲気がありません。イギリス人だからか?



それよりも、太陽=神の秩序、という構図が後半のメインであり、神の絶対的な存在に抵抗せず、受け入れたい、という欲求に陥るものが続出でした。
自らの意思で、太陽光に焼かれるものが・・・ え?
飛ぶまえから分かってたのではないかと思うが、そういう問題を解決するために乗務してるはずの精神科医が、最初に焼かれたい病に、日焼けして皮がむけてたぞ。



さらに、神と自分の問題になっていく西洋人のみなさんですが、ラストはミッション成功ですから、ん? となります。太陽も思うがままにできたの? ん?
問題にしてることと、ラストのバランスがちぐはくです。



さて、良かったところは、イカロスのデザイン。
太陽に向かうため、船体全体を大きなパラボナアンテナ型の傘でシールドしています。きれいで、面白い。
これが航路を変更したときに、傘のシールドの一部が破損して、危機に見舞われてしまう。それだけ、水星のあたりでは太陽熱が強烈だと。日焼けに弱い私には、恐怖・・・赤道に近づくだけで、焦げるもんね。



真田広之がキャプテン。
へーーー。真田さんは英語の発音に、いかにもな日本人訛りがない。
冷静だけど、柔軟性もあるいいキャプテンでした。しかし、アンテナ修理のときに、太陽に焼かれて塵になってしまいました。



キリアン・マーフィー。
なぜ彼がこれを選んだのか、さっぱり分からないのですが、物理学者の役です。全然マッチョじゃないけれど、学者にしては気骨のある役柄だった。







2011/09/24

『サヨナライツカ』

サヨナライツカ 2009年



監督/イ・ジェハン
中山美穂、西島秀俊、石田ゆり子、加藤雅也、マギー



★★



人に勧める度は、★1なのだが、西島くんを鑑賞しつつ、いろいろ笑える映画ってことならまぁ・・・。



不思議な演出に戸惑うばかりの私。たとえば、冒頭、大邸宅で光子(石田ゆり子)が婚約者の豊(西島秀俊)にお茶を出すのは、床の上。むむ、光子ったら身持ちが堅いフリして誘ってる!と思ったのだが、たぶん違うよね。韓国の監督だからか?



沓子との逢瀬で、光子からの定時の国際電話にぎりぎり帰宅の豊さん、最後、電話に向かってダイブしてた。ダイブ・・・ 無茶っていうより、バカすぎです。



とりあえず、豊は思われすぎていいトコ取りってことでいいのかしら。妻には尽くしてもらったようだし、光子にも離れたあとも思われてたし。
愛してたのに、どうして25年も会いに行かなかったのか。それは、豊さんは出世したかったからだよね。ずるいよー。NYで探したんだ、とかって! せめて離婚しとけと思うわ。ほんと身勝手ねー。



豊は婚約者が愛人に釘を刺してたことも知らず、立派に出世したのでした。
一度でも愛しているといわれたことはありますか? 微笑みながら言う光子、偉い!てか、怖い。ここから居なくなってください、っていうのもスゴイものがありました。



あー、期待したミポリン頑張ったベッドシーン、ですが(公開時はR15)。全然、セクシーじゃなかった。沓子ってば、無言で部屋に突入して、いきなりセックスするのに、色気なしとは・・・がっかりだよ。
中山美穂は、しゃべらなければ美人と思うけれど、声と喋り方が子どもっぽい。アイドルの頃は、大人びている人だったのに、意外でした。ばかな子?ってくらい幼稚に見えてもったいない。



西島くんは、腹筋鍛えてるのねっていう上半身が見られます。「好青年!」というより、出世のために名家の娘と結婚できる、計算高い男に見えます。あ、それなのに、沓子におぼれたということが言いたいわけか。そうかそうか。
だけど、出世とはかりに掛けるほど、中山美穂がいい女に見えないところが問題だ。



美しい恋愛モノにしたいのか、笑わせたいのか、何だかよくわからない演出に笑ってくださいの2時間です。





2011/09/21

『つぐない』

つぐない Atonement 2007年イギリス



監督/ジョー・ライト
キーラ・ナイトレイ、ジェームズ・マカヴォイ、シアーシャ・ローナン、ロモーラ・ガライ、ベネディクト・カンバーバッジ、ジュノ・テンプル



★★★★



1935年、戦争前夜のイギリス。貴族の娘セシーリア、同じ大学にかよう家政婦の息子ロビー、そして13歳の文学少女な妹ブライオニー。
ロビーに恋していたブライオニー。屋敷でのやりとり、覗き見した(下品な表現の)手紙。ふたりの大人の恋愛に衝撃を受けた直後、いとこが庭で男に襲われているのを目撃した。
ロビーに違いないと思い込んで、嫌悪からもロビーが犯人だと証言し、彼は刑務所へ。医者になる夢も、セシーリアと結婚する夢も、すべて破壊されて。



■屋敷の風景がきれい。
室内はやさしい花柄、庭や森もイングリッシュ・ガーデンとはこれ・・・といわんばかりの満ち足りた風景。画のよう。



■衣装、ステキ。
セシリア姉のセクシー(でも上品)なシンプルドレスも、妹ブライオニーの子ども服も、繊細でうっとり。シースルーの袖とか、下着のレース。どれもすてき。



■小道具が面白い。
この頃にはもうあったんだ!という面白さがたくさん。オイルライター、ペディキュア、電話(いわゆる黒電話なカタチの・・・)、お屋敷が時代モノなので余計に驚く。
ロンドンでは、2階建てバスが走って、地下鉄も。あ、ナルニアの時代と同じか。



■このくらいの思い込みのウソって、子ども時代にはあるかもっていうのが、また痛いところ。
成長して冷静に思い返すと、姉はロビーと愛し合っていたのだし、いとこは乱暴されたのではなく、自分の意思だったのだと分かるけれど、時すでに遅し! こわい。
戦争という不幸なものがさらにあり、幸せに暮らせるはずの二人は、離れ離れになったまま、亡くなってしまった。



ロビーは刑務所か、兵役かと選択をせまられ、ロビーは連合軍としてフランスへ。出征直前、ナースをしているセシーリアとロビーは再会。数年を経たいまも、二人の気持ちは変わっていないことを確かめ、彼女のもとにもどることを縁にフランスへ渡ります。
が、ダイナモ作戦が展開する海岸で、作戦最後の日、ロビーは死んでしまうのだった。



自分が思った以上に、他人を傷つけたこと。骨の髄まで凍みる恐怖・・・



最後、老作家となったブライオニーが最新作「つぐない」出版のインタビュー映像になるなかで語られる、そりゃないよ!な話で、少し落ち着いていた私の気持ちがどん底にー。



ロビーは無事で、セシーリアのところに一時帰還してる様子が描かれていたのだけれど、実際はフランスで死亡。姉も、ロンドン大空襲で死亡。ががーん。
それでは望みがないので、物語は真実とちがう結末にしたのです、と語ってます。



・・・どろどろな話にならないのは、絵画のような映像と、美しい(胸は洗濯板のようだけれど)キーラ・ナイトレイのなせる業でしょう。



・ロビー役、どこかで見たと思ったら『ナルニア国物語』のタムナスさんでした。
・先日、ドラマ放送されてた『シャーロック』のホームズ訳のカンバーバッジが暴行(と思われた事件)の真犯人だった・・・髪が茶色だと、雰囲気違います。やや体重も重そうな。



2011/09/19

『ゲイ短編小説集』O・ワイルドほか

ISBN:4-582-76315-4 平凡社 1999年



★★★



「近代英米文学の巨匠たちの“ゲイ小説”を集約。新たな視点による大作家の読み直しとしても、英米文学の「古典」としても、読み応えある作品集。これぞゲイ・キャノン。(本体裏表紙、解説より)」



最近、Bromanceという造語(brother+romance)を聞いたところだったので、キリスト教圏の同性愛的なものへの態度がとても気になり、手に取ったもの。



同性愛的な人間関係、あるいは同性愛を排除する社会との関係、自己規制などなど。英米文学など手にしたことがないので、面白いものだと思って読みました。



オスカー・ワイルド、ヘンリー・ジェイムズ、サキ、D・H・ロレンス、サマセット・モームなどが収録されています。



ヘンリー・ジェイムズってこんな疲れる話を書くのか!(目的語が隠されたまま、二人の会話が進みます。「それ」「あれ」は起こった、などと)と驚く。まだまだ知らない世界がたくさんだ。
噛み応えのある小説、他にも読んでみたくなる。