2008/12/21

『サラリーマン合気道』箭内道彦

ISBN:978-4-344-01551-7



☆☆☆☆



きっかけは、フジテレビ(フジテレビ) No music,No life(タワーレコード) 一晩で54パターンCMを流したUNO(資生堂) などなどなど。面白い、気になる広告をつくっている箭内道彦の仕事術指南。



タイトルのふにゃららした文字、流される、という言葉のイメージを覆すような、仕事との関わり方です。相手の懐に飛び込んで、翻弄されながらいいものを作ろう、という。したたかだし、冷静な考えの持ち主のよう。
自らの体験、経験をもとに書かれているので具体的でイメージしやすい。が、広告業だけの話ではなく、人とどう関わるか? 仕事をうまく進めるポイントはどこか?という普遍性もあるお話満載。



すでにサラリーマン歴が長い人はそうそう、と思うかも。そして青々とした燃える若きサラリーマンには、息苦しくなったときに読むと新しい発見がありそう。



きっと箭内さんはとても真面目で努力家で負けず嫌いな面と向き合って、今のような金髪姿になったのだろうと推測します。
ひとりで仕事しろ、と書く一方で愛されよう(助けてやろうと思われる人になろう)とも書くあたり、バランスのいい方だとも思いました。



フリーペーパーの「風とロック」も読んでみたい。
http://www.kazetorock.co.jp/





2008/12/20

『<少女小説>ワンダーランド 明治から平成まで』菅聡子



『女学生手帖 大正・昭和乙女らいふ』

中原淳一の絵に吉屋信子の『花物語』一部掲載。大正~昭和期の「女学生」という妻に、そして母になる前の猶予を与えられた少女たちの文化を図録たっぷりにまとめた一冊。



当時の雑誌にのった悩み相談がお答えとともに面白すぎでした。



妹のようにかわいいと言われてせっぷんされたけど、妹とはせっぷんしないと思うがどういうことですか(結婚前の男女はしてはいけないし、結核感染のおそれもあるから非衛生です、とのお答え。道徳と衛生の観点から諭してます)



足が太いんです、とか、毛が濃いとか、美容相談にも自信満々にお答えしてて、何とかバンドを巻けばよい、とか、何とかクリームを塗りなさい、とか。



2008/12/01

『斎藤祐樹くんと日本人』中野翠

ISBN:978-4-16-660568-2 文藝春秋 2007年



好青年で、豪胆で、昭和の香りがする・・・2006年甲子園を湧かせた「ハンカチ王子」斎藤祐樹くんについて。



マウンド捌きの美しさ(マウンド上の所作がキレイだという意味で書いている)、映画のスター市川雷蔵や三浦友和を思い起こさせる涼やかな目元、と斎藤くんの魅力について語った1冊でした。



今どきこんな子がいたなんて!と、男女ともに懐かしいような、あるいは母性のような?そんな気持ちになるという斎藤くんなのでした。気の強そうな感じ、頭脳プレイも見せるうまさ、確かに斎藤くんは惹きつける力を持ってますね。
道産子としては田中くんのほうがカワイイなぁと思って見ていました。





『クララ白書Ⅰ』『クララ白書Ⅱ』氷室冴子

コバルトがまだ元気で、X文庫が出た頃に思春期の入り口にいた私。ですが、氷室冴子はあまりツボではなくて、読んでいなかったなぁ・・・とふと思い(逝去されたと聞いたせいものあります)、友人に何から読めば?と聞いて薦められた。



1、氷室冴子と私(と友人も)、同じ大学の同じ学部出身だし。
2、札幌が舞台だから親近感沸きまくり。



確かに!たいてい小説は住んだことや見たことの無いものでも、想像で読むけれど、あまりに脳内でリアルに湧き上がる情景におかしささえ感じられました。マリア像が目に浮かぶよ・・・



女の子たちに、友情とかほのかな恋とか、まだ何者でもない自由さとか、勇気とか。もしも知小学生の私なら、もっと親近感が湧いたのか?
全体に明るいので、ツライ状況にもしもあっても、きっと大丈夫と元気をもらえるような小説かもしれません。



ただ、なぜ小中学生の頃に氷室作品を読まなかった理由を、読みながら思い出しました。
主人公がいい子で、あまり好きになれない(この年頃で主人公が好きじゃなかったらまず2作目は手にしませんね)。
舞台が普通の生活をあまり逸脱しない(その頃、ミステリとSFにも染まっていたので、普通のお話にあまり興味が湧かなかった)。



今、読んでて1番ダメだわと思ったのは、大学生の光太郎に対する態度が、いやだ! 
あんなおじさんって!ひどいわー。しーのちゃん、ひどすぎ。いい子のフリだ・・・ご馳走になっててその言い草、甘えん坊さんー。
私の長女体質が妹キャラのしーのへの憎しみになっているのだろうか。



キャラだけなら、変人らしいマッキーのほうが好みでした。わがままでもいいから、自分の言い分を通す気の強いキャラのほうが好きなのです。







2008/11/26

『感染地図』スティーブン・ジョンソン

ISBN:978-4309252186



☆☆☆☆☆



19世紀半ばの、ヴィクトリア時代、世界最大の都市だったロンドン。下層の人々の住む地域でコレラの感染があっという間に広まった。
コレラは原因も治療法もわからない、致死的な新興感染症で、インドとの貿易が拡大するなかで、交易網に乗ってイギリスを襲うようになっていたのだった。



当時の常識ではコレラは悪臭や死人がつくりだす「瘴気」が原因だと言われているなか、目に見えない細菌が原因だとする説にどうやって至ったのだろうか? 
これは原因がコレラ菌に汚染された井戸水だとされ、ポンプの柄が外されるまでの1週間たらずの間の物語ともいえます。



章立ては曜日ごとに分けられ、二人の探偵が原因を突き止めるまでを時系列で一緒に追っていくような展開、面白い。



探偵のひとりは、ヴィクトリア女王の無痛分娩を成功させた麻酔医、ジョン・スノー。ひとりは渦中のブロード・ストリートの牧師、ヘンリー・ホワイトヘッド。



実験、仮説、実験、思い込みを排除し、理論立てて原因を突き止めるスノーの冷静な知力と粘り強い調査と、毎日のように住民と接する経験から、汚水や無知が病気の原因ではないとの実感が手を結んだとき、目に見えない細菌が冷たく美味しいと評判の井戸水に流れ込んだことがコレラ感染の原因だと突き止めるに至ったのだった。



彼らの足取りと推理の過程とともに、なぜそれまで原因がわからなかったのか、なぜロンドン市の役人たちが反対の立場をとったのか。
当時の医学の常識や市民、マスコミ、医者までもが信じていたでたらめな治療法などを織り込んみながら、彼らの生きた時代の常識や雰囲気も味わえるのが、この時代を立体的に感じ取ることが出来てよい。



たとえばー、人口が爆発的に増えたのに、下水は未発達だった。さらにそれまで各家で溜めていた糞尿は、清潔な!水洗式トイレの登場で、大量の水を含んだ汚水では、すぐに肥溜めがあふれるようになった。あふれた汚水は下水にも、道にも、川にも流れ込み、ロンドンは最悪の悪臭都市になっていたのだ・・・というような。









2008/11/08

『腐女子化する世界 東池袋のオタク女子たち』杉浦由美子

ISBN:978-4121502292 2006年 中央公論新社



☆☆



「腐女子とは・・・」との出だし以外は、各評論家の言葉を受けて、賛成したり反対したりするばかりで、うすっぺらいのであった。残念。



だいたいオタクって書いてるけど、オタクの定義もしてくれてないので、もう、いい加減なものです。



これを読むと、腐女子は30代しかいないのかと思うくらいに、30代の素敵な女子をピックアップ。ふーん。格差社会のひずみだの、社会での女性の立場が男性同士の恋愛を描く小説・漫画を愛読する腐女子を生んだらしい。



って、ものすごくそれは視野が狭い断定で、乱暴すぎます。新書ってこんな内容でいいならアタシだってずうずうしく書けそうな気がして来るんですけど。





2008/08/24

『ABCDEFG殺人事件』鯨統一郎

ISBN:978-652-08625-4 2008年 理論社<ミステリーYA!>



☆☆



両親をなくし、飼い猫をなくしたショックで耳が聞こえなくなった18歳の女の子が主人公。探偵事務所に勤めているアンナは、そこでいろんな事件をある特技を使って解決しまくり。



謎解きが簡単になるなら、やっぱりキャラ立ちしまくっててほしい。アンナちゃんが18歳だなぁって思えない。しかも人が次々に死にすぎだし!



猫とか動物と会話できる探偵がいるのかもしれないが、無機物と話が出来るって・・・いつでも現場から情報がもらえて良いわねー(あまりに謎が簡単に解けて物足りない)





2008/08/23

『不惑の手習い』島田雅彦

ISBN:978-4087712261 集英社 2008年



☆☆☆☆



ムダにいい男すぎる作家、島田雅彦が一流の芸術家、料理家、職人などから手ほどきを受ける体験記モノ。



形から入る人らしく乗馬ではウェスタンな服、左官では量販店で買ったつなぎ、を素敵に着こなす作家でした。



読んでる限り、カンは良いらしく、そこそこ様になっているものも多い。集中するのが上手いのかも。さすがだな、作家。







『のだめカンタービレ』21巻

真澄ちゃんファンであり、恋愛に比重がかかってきたパリ編(真澄ちゃん・・・・カムバーック!)には以前ほどの興味がわかないのだけど、とりあえずって感じで読みましたー。



お、今回はなかなか面白かったです。ミルヒーのダークサイド?というか、ミルヒーの音楽家としての力をのだめにも?!というところまで。





2008/08/20

『闇の聖杯、光の剣』篠田真由美

ISBN:978-4652086223 理論社



☆☆★



<北斗学園七不思議②>
シリーズだというのに、表紙のイラストが違う感じになりました。表紙裏の学園見取り図も。うーむ。シリーズなら同じ見取り図を使ってほしい。だって見てる方向まで違ってるんですけどー。



今回はナチスの残党(のような、でも違う)組織と学園とのつながりが主軸。オカルト風味もあり、ナチの話もあり、美術史がらみもあり、こんな軽いお話に入れても溢れるだろうというエッセンスが・・・ 実際にあることを絡ませるのもいいけど、この枚数なら別に実際の事件とつなげなくてもいいのに。



またも命からがら、のわりにさくっと済ませている中学生たち。もっと怒ってほしい~ 登場人物たちについても、「前作を読んでくれ!」の言葉で済ますのは、乱暴じゃないでしょうか。これをたまたま手に取ったコもいるだろうから、ある程度分かるようにしてあげて・・・・



いまいち主人公ら三人の男の子に肩入れもできないので、残念シリーズになっちゃうかも。







『王国は星空の下』篠田真由美

ISBN:978-4652086032 理論社 ミステリーYA!シリーズ



☆☆☆



<北斗学園七不思議①>
広大な敷地に立つ、歴史ある私学に通う三人の中学生。当然、寮生活。



語り手は1番元気な「アキ」。



字も大きいし、ソフトカバーなので寝る前とかにささっと読むとちょうど良いです。七不思議を解いていくようなので、7作続くのでしょうか? 



主人公の「アキ」、正義漢で猪突猛進型。しかし命に関わるような危険な目に遭うわりに、口外するな、とかいわゆるオトナ社会のグレー理論をしぶしぶ受け入れてます。子どもで、ちょっとオトナみたいな、というあたりを出したいんだと思いますが、中学生の男の子にしては、ちょっと物分り良すぎる気がします。



七不思議の謎解きへの展開が、ひねりがなくて、ああそうですか・・・ですが、軽く読むなら、ま、いっか。



最後の謎解きに登場するのが、アルセーヌ・ルパンの話がヒントになったりするあたり、本当の対象年齢(YA世代)に、ルパンも読んでほしいのかもしれません。





『「特に」語学に効く心理学 おとなの学習 自己チュー宣言!』

ISBN:978-4757414396



☆☆☆☆



コツコツできません、三日坊主ばかりです。何の役に立つのか・・・と思うとやる気が失せます。英語は話せたら嬉しいけど、TOEICの勉強はいやだーっ



↑私が相談するとしたら、こんな感じ。そして、似たような相談がたくさん寄せられてました。そして、なるほど~といい気になったのは、



「お勉強」と思うと、いやだけど、昔の中国の文人が働きもせず詩作に耽ったかのように、私も英語というご趣味を嗜んでいると思えばよいというもの。



いいな、それ! お勉強、試験勉強と思うとやらされてるかのように思いたくなる。や、もうオトナだからもちろん自主的にやろうと思ってるんだけど。
でも、もう一歩傲慢に。



趣味なら、三日やって、一日休んでも、別にいいよねぇ~♪





2008/08/01

『もいちど修学旅行をしてみたいと思ったのだ』

ISBN:978-4093797849 2008年 小学館



☆☆☆



オトナ(おじさん)の修学旅行。カメラマン含め3名で有名観光地をめぐります。



その土地で感じたことを書いてます。ので、観光ガイドにするにはひとつずつの情報量は少なく、あまりガイド的には使えなさそうでした。
おじさんたちは、常にテンションやや低いところからのスタートらしい。



おじさんたちは、その土地の歴史にじーんと感動したり、建築物をつくった人物像に思いを寄せたり、楽しそうでした。で、夜は地のものを頂きまくる。ちょっとこの気持ちは分かります。





2008/07/23

『空想キッチン!』ケンタロウ 柳田理科雄

ISBN:978-4840121354  2008年 メディアファクトリー



☆☆☆☆



空想科学読本シリーズでおなじみ柳田理科雄と家庭料理研究家のケンタロウが、アニメに登場する気になる、あるいは美味しそうなあの料理について語ります。



ラーメン大好き小池さんのラーメンの食べ方(ズバズバズバ!)から、ラピュタの目玉焼きのせパン、ハウルのベーコンエッグ、ハクション大魔王のハンバーグ!



ケンタロウが悔しがるほど、ジブリの描く料理&食事シーンは完璧だそうです。さすがジブリ。食事は生きる基本ですものねー。美味しそうに描くって大事ですよ。で、パズーの手際がとても良いとも褒めてたりします。
ジブリのようにしっかり完璧なのもあれば、どうなってるのか不思議な料理も。ハイジのおんじが作るチーズに関しても、ヤギは臭いとか、なかなかの薀蓄ぶりです。



どれも小さな頃に見て、心に刻み込まれているあの料理なので~ これを実際につくるとどうなるのかと読むのが面白い。
2人ともふざけている風で、それぞれの専門に関してはしっかり答えているのが良いです。



ちゃんとケンタロウが再現(レシピつき)して、柳田さんが試食してます。美味しそう!



第1章 小池さんのラーメン
第2章 ラピュタの目玉焼きパン
第3章 ポパイのホウレン草
第4章 ハイジのチーズをのせたパン
第5章 ギャートルズのマンモスの骨つき肉
第6章 宝寿司・梅さんの寿司
第7章 キテレツ大百科のコロッケ
第8章 日本昔ばなしの大盛りご飯
第9章 ラムちゃんの手料理
第10章 銀河鉄道999のビフテキ
第11章 ハウルの厚切りベーコンエッグ
第12章 ハクション大魔王のハンバーグ
第13章 ナウシカのチコの実
第14章 チビ太のおでん
第15章 ルパン三世のミートボールスパゲッティ





『変愛小説集』アリ・スミスほか

ISBN: 978-4062145442 2008年 講談社



☆☆☆☆☆



翻訳家、岸本佐知子さんが選んで訳した「変な」恋愛小説集。現代英米文学ということで興味もあり、読んでみました。



エッセイは読んでいたのですが、訳は役者の押し付けを感じない良い加減でなされていて良かったです!
爽やかそうで、グロくて、でもやっぱりそれも「愛」とか「恋」だったりして。



『まる呑み』なんかは気持ち悪いくせに、とても切なかった。女の人って繊細そうで図太いとこともあって、そういう不思議なバランスがうまい。意外と男女の物語には文化を越えた共通点が多いものですね。





「五月」 アリ・スミス
「僕らが天王星に着くころ」 レイ・ヴクサヴィッチ
「セーター」 レイ・ヴクサヴィッチ
「まる呑み」 ジュリア・スラヴィン
「最後の夜」 ジェームズ・ソルター
「お母さん攻略法」 イアン・フレイジャー
「リアル・ドール」 A・M・ホームズ
「獣」 モーリーン・F・マクヒュー
「ブルー・ヨーデル」 スコット・スナイダー
「柿右衛門の器」 ニコルソン・ベイカー
「母たちの島」 ジュディ・バドニッツ





2008/07/18

『東京大学<ノイズ文化論>講義』宮沢章夫

ISBN-13: 978-4861912849 2007年 白夜書房



☆☆☆☆



「美しい国」「品格ある国家」「格差社会」の陰で排除される〈ノイズ〉とは、なにか。
 大好評「80年代地下文化論」に続き、宮沢章夫がまたも東大駒場キャンパスの密室で悩み、思い出しつつ語る「見返りのない講義録」。
白夜書房HPより)



前回のは未読なので、つながりは分かりませんでした。ゲストで面白かったのは岡田斗司夫の回で、オタクがオタクとなっていった95年の宮崎事件を軸に語ってます。



当時、オタクは(というか、アニメファンとかってことだと思いますが)社会の底辺にいるという自意識を持っていたとか。岡田さんは世間様(ふつう、とか一般的、とか)から外れたと思っているし、思われている<ノイズ>側からの視線です。



具体的には、ってこのほうが面白い話でして、「どうして服を毎日変えるのか」「異性に興味ないし(思春期のモテたい願望はナシ!)」ツェッペリンが何?洋楽って何? →アニソンがあるじゃない! とかです。服は毎日替えたいけど・・・異性に興味なしってあたり、ちょっと・・・自覚があるので、面白いなと思います。



講師の宮沢さんは、モテたかったし、音楽は洋楽(ロック)だし、と真逆なので余計に面白いのでした。



90年代、そういう<ノイズ>排除の方向に、意識・無意識に日本社会がシフトしてきてて、でも、それは不自然だろうというのが全体的な方向です。
いろんな事件、出来事をテーマに80年代を通して、現在を知るというのが目標だというのですが、それは最終章でちょこちょこと。基本は80年代ってこうだった、的なほうに流れがちでした。



また、こういうのを10年後に読み直すのも面白いんだと思いますー。





2008/07/17

『「狂い」の構造』春日武彦・平山夢明

ISBN: 978-4594054632 2007年 扶桑社



☆☆☆★



精神科医、春日武彦と作家、平山夢明(・・・なんと言うのか、未読なので失礼)の対談。



タイトルに「構造」とあるので、学術っぽいのかと思ったら、言いたい放題、ノリノリ放談でした。フツウじゃない、とか、あの人へんだよね、とか実際に起こった事件や人物を肴に、ずけずけ楽しくお話してます。ああいうのは治らないよ、とか(精神科医が言うと、治らないのか!とガッカリだ・・・)。本当に言いたい放題。



弱ってるときに読むと、楽しくなさそう。自分も元気なときは「・・・コワイ」と思いつつ楽しく読める1冊です。



とにかく、部屋が汚いのはダメダメの始まりだそうですから、落ち気味だなと思ったらまず「部屋を掃除!」ですって。分かる気がする。
自分がダメっぽく感じたら、部屋を掃除です。



あと、すべての精神的な問題は「面倒くさい」が大きな要因じゃないかってことも言ってて、サービス業のはしくれにいる私にはとても納得。自分勝手な人が多いし、そういうのって面倒だからか言うのかもなぁと。どんな些細なことでも、自分が優位に立ちたい人のことを春日氏が「王様病」って言ってるのに、ウンウン頷いてしまった。



これからは訳の分からない人は「病気だ・・・」と思っていちいち腹を立てないことにしておこう・・・かな。





2008/07/09

『石田衣良の白黒つけます!!』石田衣良

ISBN:978-4620318653 毎日新聞社 2008年



☆☆



毎日新聞の生活家庭欄で、読者に硬軟おりませた質問をし、白黒はっきりアンケートで結論をつける、という連載の書籍化。



たとえば
「フリーター、ニートになるのは本人のせいか、社会のせいか?」
「中国と仲良くしたほうが良い?」
「大学生はばかになったのか?」
「結婚してからの恋愛はありか?」



などなど。読者からの意見を紹介して、最後に石田衣良がジャッジします。必ずしも多く意見があったほうに旗があがらないことも。



おおむね、石田衣良の意見がたいそうバランスのよい品のある意見でした。真面目な意見を真面目に書いてました・・・
ちょっとユーモアが足りないのが不満。



巻末についている男女、年齢別のアンケート結果も面白くて、女性は平和主義でけっこう寛容なのだが、男性は好戦的で意外と受け入れ幅が少ない傾向があると思います。



ほぼ日でやってた「日本人の思い」にも似てますね。こちらも書籍化されてます。(「日本人の思い 」)





2008/07/05

別冊文藝春秋

08年1月号から連載の「プリンセス・トヨトミ」万城目学、1番楽しみに待ってます。かなり奇想天外な展開で、先がまだ読めません。



あとは、同じく「別冊文藝春秋」連載中だと
「まほろ駅前番外地」三浦しをん
「三匹のおっさん」有川浩
「ブロードアレイ・ミュージアム」小路幸也



あたりを読んでマス。



2008/07/04

『春の魔法のおすそわけ』西澤保彦

ISBN:978-4120037771  2006年 中央公論新社



☆☆☆★



40半ばの売れてない作家(女)、20代後半の美青年が桜の下で出合った。ヤケになって飲んだくれていた女は、二日酔い状態で電車から降りるときに間違って掴んでしまった鞄の中身を使って、美青年を買うことに。鞄の中には2000万円。



西澤保彦の好きなとこは、ぐちぐち葛藤してる展開が面白いので、まさに水を得た魚のような(しかも主人公は作家)脳内会話の嵐。



毒もあり、笑いもあり、そして悲惨な状態なのに、何となく笑えてしまうのも良い。ふざけた会話をしてると思っていたら、けっこう人生の痛いところを突いてくるのも、この作家のうまいところです。



ミステリ的な謎解き部分は、最初からそういうトリックだったんだろうなぁというところで落ち着くのだけど、ひとりで切羽つまったり大胆になる女性を楽しく読んでたので、謎解きされて終わっちゃうと思うのが寂くもありました。





『フランスのおいしい休日』伊藤まさこ

ISBN:978-4081020706



☆☆☆☆



ほんとに美味しそうで、空気が爽やかそうで、楽しそう。普通の旅行者にはこういう旅はなかなか難しいのよね、と羨ましさ爆発の一冊。そんな無防備なカッコで私は旅行できないもんー。





2008/06/14

『佳人の奇遇』島田雅彦

ISBN:978-4-06-214005-8 2007年 講談社 



「婦人画報」2006年1月号~12月号連載



☆☆☆



「ドン・ジョヴァンニ」の舞台に今夜集まるのは、魅惑の歌声ながら本番で実力が出せないオペラ歌手、彼を舞台にあげれば成功報酬100万、で雇われたホステス、色男で絶倫を誇るマエストロ、クラシックファンの冴えない大学講師、彼に一目ぼれした女、彼女にアドバイスする占い師、路上デビュー寸前の男・・・などなど。



168ページの中篇で読みやすい。『ドン・ジョヴァンニ』の物語を比喩に人物たちの気持ちを語ったり、『ドン・ジョヴァンニ』の解説が挿入されたりで、気軽に読めるオペラ案内の側面もあり。聴いてみたくなる。



どん底の人たちが多く出てくるわりに悲壮感がなく、むしろからっと清清しい語りになるのが、島田雅彦風なのかしら? エッセイは時々読むが、熱くてクールで、という世間との距離感が小説でも見える気がします。



文章が水増しした感がなく、締まっているのも良かった。



☆NHK「知るを楽しむ」2008年7-9月 「オペラ偏愛主義」島田雅彦出演中☆



本人が素敵すぎるのって、作家にとってよいのか悪いのか・・・島田雅彦は生きてる日本の作家のなかでは1番だと思うんだけど。『ダ・ヴィンチ』のいい男ランキングがいまいち腑に落ちないのう





2008/06/07

『ザ・万歩計』万城目学

ISBN: 978-4863110090 2008年 産業編集センター



☆☆☆☆



マキメ学、小学生のころ(よく覚えてるなと感心)、大学生のころ、世界をうろうろ旅したとき、社会人の頃(工場の経理で、現場にも行ってたという)、をたまにアホアホ妄想を挟みつつ書いてます。



何となく、ひょろっとした青びょうたんのようなイメージだったけど、モンゴルに行ったりトルコに行ったり、ヴェネツィアでバックパックを盗まれたりと、ワイルドな人でした。
何もないタイガで、生きるために食事をつくり、食事を捕り、つくり。と、来るまでは雄大な自然に抱かれて・・・と生っちょろく考えてたことが、木っ端微塵に砕かれたエピソードなど、面白い。人間として彼らとマキメが違いすぎたらしい。



『鴨川ホルモー』から読んでますが、どんどん文章がかしこい感じになり、物語が骨太になってきてますね。京都を荒らしている森見登美彦氏に比べると、あくまでも男子!な作風が好ましい人です。登美彦氏は湿り気があるものね~それはそれで好きですが。



男らしい?というと、黒い稲妻・Gショック!ゴッキーとの戦いの歴史も印象深いお話でした。大阪よりも、東京はG軍団がうようよしてるのね。コワイ。ヤツらを前に、逃げるか闘うかの二者であるといい、もちろん男子マキメは闘ってました。私も闘う派。しかし、あまり想像したくないお話・・・。





『女子の国はいつも内戦』辛酸なめ子

ISBN-13: 978-4309616476 2008年 河出書房新社



☆☆☆



「14歳の世渡り術」シリーズのひとつ。



この本の前書きにあることが、すべてなんだよなぁと三十路にはよくわかります。でも、渦中にいて友達関係とか学校とか、そういうことに絡まれてる中学生が手にとって、これで少しでも気が楽になればいいよね、と思います。



つまり、無視されたとか、悪口言われたとか、そんなのどうでもいいことだっていうことなんですよー。全然、大した問題じゃないのです。
そりゃツライと思うし、↑今こんなことが自分に起こったらやはりツライですけど、嫌なら、そこから逃亡することも出来るし。



私は早々に女子的世界からドロップアウト、他人のことは気にしないことにしちゃったので、楽でした。内戦ばかりの紛争地帯から亡命。亡命先は・・・平和な女子大。 



内容は、女子世界のヒエラルキー、スポーツ系、普通系、オタク系、圏外? とか分けてそれぞれのメリット、デメリットを書いてあるのは、そうだよな、と。
それぞれでうまく立ち回るコツとか・・・ ただし半分冗談、半分本気と思って読むのがちょうど良さそうです。
それぞれが持つと良さそうな文房具まで。へぇ。



他には、アメリカの私学、公立、ドイツからの帰国子女、と、男子、に「女子ってどうですか」と聞いてる章も。ここはちょっと作者の意見のため意図的に抽出したかも。



アメリカの子たちは友達づきあいがさっぱりしてて、差別はいけないことという建前があるからいじめはないとか。ふーん。ドイツでは、思ったことは言葉にしないと伝わらないとか。



ここも、日本が嫌になったら、世界に飛び出して行っちゃうのもアリ、と思わせられたら良いかもです。



たまにちょこっと毒を吐いてはいますが、けっこう良心的な14歳に向けての世渡りレクチャー。オトナはふーんと笑って、子どもは勇気をもらってください。





2008/05/23

『スピリチュアルにハマる人、ハマらない人』香山リカ

ISBN:4-344-98003-4 2006年 幻冬舎(幻冬舎新書4)



☆☆



ハマる、ハマらないかは個別すぎてタイトル先行だった。



香山さんは、これが本当だともいんちきだとも言うわけではなく、スピリチュアルブームについて、どういう社会、どういう流れがあって、かつ、どのような人々がスピリチュアル的なものを肯定して いるのか?との考察をしています。



なかでも人気の江原啓之氏については多く言及しています。 拝み屋だの、霊媒師だのといわれると拒否反応があっても、「スピリチュアル・カウンセラー」というとマイルドに。



精神医学では、コドモがある時期、ぶいぐるみとかタオルなどに執着するのを「移行対象」と言って、そしてオトナになってもぬいぐるみに愛着を持つのは、この守られていたいという願望の表れだと考えるそうです。
で、江原氏がまさに「トトロ」のように、丸くて優しくて、中性的なイメージなのも、受け入れられやすい要因になっていると。



彼はそんな柔らかな物腰で恋愛や人生相談をしているが、それは本当にしたいことへの布石というか、表向き、宣伝活動らしい。
本当は、物欲にからんだ話ではなく、魂の話からそれをより良き社会するために、おのおのどうすればいいのか、という話をしたいのだという。へえ。



しかし、江原ファンだという(多くは女性)ほとんどは、江原氏の社会的発言はスルーで、「私の恋愛どうなるの?」「私が幸せになるにはどうしたら?」といつまでも聞き続けているとの指摘です。



で、香山さんの筆は、内的世界「私」の幸せだけを願う人々とは?という考察へと流れます。



自我が脆弱になっている(らしいです)ところへ、それはあなたのせいじゃなく、前世の問題だ、とか、起こっていることすべてがあなたのための出来事だ、とか言われるとツライことに耐えなくても良いと思え、それが気持ちいいからスピリチュアルなものが広く受け入れられている土壌なのだということでした。



そんなに自分本位なのか、いまは! 反省しておきたい点です。



オウムの反動で、一時はこういうものは排除された感じでしたが、最近は疑うものとしてじゃなく、見えないものを受け入れることこそ評価される態度だという風潮です。科学で証明されないから、ないものだということもできないだろう、と。



科学者が世界をどれだけ見つけたのか・・・? 私はまだほんの少しだろうと(無責任に)想像しているので、もしかしたら霊だのオーラだのを数字で計ることができるようになるかもしれません。というか、科学的なモノサシではないモノサシが登場して、世界の見方を変える日が来るかもしれません。



と、思っているとちょっと楽しい。







『本日、東京ロマンチカ』中野翠

ISBN:978-4620318448  2007年 毎日新聞社



☆☆☆



サンデー毎日掲載の「満月雑記帳」1年分をまとめたもの。



枯れた感じを好みつつ、毒気のあるものも好き、といういつものバランスが全体にある。



読みなれている作者のものだと、思ったとおりの方向に話がいったり、怒るポイントがそうそう、と確認できたり。前よりも、徐々に、怒らなくなってるような気がします。怒ってても、キイーッって感じじゃないのね。



意外性はないが、中野翠目線になりたいときにささっと読むと楽しい。一年の出来事を振り返るにも良い。





2008/05/18

『猫島ハウスの騒動』若竹七海

ISBN:4-334-07635-1 2006年 光文社



☆☆☆



久しぶりの若竹七海。葉崎市シリーズ、探偵・葉村晶シリーズともども大好きな作家のひとり。



これは葉崎市シリーズ、に近い。



舞台は葉崎市の離れ小島、通称「猫島」。入り江に「お腹をナイフで突き刺された猫のぬいぐるみ」が置かれているのを発見したところから、台風接近中の猫島に様々な事件勃発。そして、それらの大小の事件はどんな関連があるのか? 



殺人事件が起こるけど明るく楽しく謎解きが進みます。
随分前に読んだ葉崎シリーズの2冊『ヴィラ・マグノリアの殺人 (光文社文庫)』『古書店アゼリアの死体 (光文社文庫)』も読み直したくなりました。



明るい雰囲気にまぎれて、実はけっこう毒舌なのが若竹七海の持ち味だと思うのですが、今回はそれほど毒はなし。ほのぼのでもないけど、主人公らしき高校生の女の子、その祖母と友人のおばちゃまたちが元気なのが、スカッとします。



猫が活躍する点については、うーん、どうだろう、これ。事件が大きく展開するところで大勢の猫が活躍しますが、それって誰かが(猫か?!)がそれ!と命令したのか、あるいは人間の思惑と無関係にただ動いたのかがはっきりしない。



頭脳明晰な探偵猫が活躍してもいいし、何も考えてないただの猫なのに結果的に解決になった、でもいいのですが、どっちつかずのくせに大活躍してるのが腑に落ちないのでした。







2008/05/06

『52%調子のいい旅』宮田珠己

ISBN:4-947702-50-5 旅行人 2003年



☆☆☆



「ゴージャスなミックスパーマにしましょう」の一文で、笑い転げた。←日本ブームの台湾でみつけた、今どきの日本語をマスターするための本の例文。これは読んでみてほしい~



まるで一般的な旅行記(●日、何をした、何を食べた・・・など)とは違う話の進み方で、全然実用的ではないけれど、何だか楽しい。旅の話と思わせておいて、サラリーマン時代の話になってたり、どこに着地するのかわからなくて漂々としてます。



どこまで本気なのかわからないテンポの良い文章で、楽しかったー。



ジェットコースターに乗りまくるだけのツアー『ジェットコースターにもほどがある』や、巨大仏を見て歩く旅『晴れた日は巨大仏を見にもしているようなので、また読んでみたいと思います。





2008/05/04

『若者殺しの時代』堀井憲一郎

ISBN:4-06-149837-1



☆☆



「若者殺しの時代」というやや過激なタイトルのために、最終的に強引につじつまを合わせてきた感があります。が、さらっと読んで、ふふっと笑って、たまに考える材料にも出来ます。80年代に若者(だいたい20歳前後だと思いますが)だった方はとても懐かしく、すぐ上や下(それは私の世代)も懐かしく思い出せそう。



タイトルに大して意味はないです。80年代的な若者が殺されてなかったわけじゃないし、若いから得するほうがおかしいでしょう。



まえがきに「若者であることは得なのか、損なのか」と。
団塊ジュニア世代の私の感想は、どちらにも当てはまる、です。若いからって得した覚えはないし、年齢のせいで損したっていうより、なにせ不況だった・・・
しかし、青春を80年代で過ごした堀井さんたちは「得だ」と感じながら過ごしたらしい。そうでしょう、そうでしょう。バカかと思うくらい軽く軽く。そんな風に見えてました。



クリスマスが恋人たちのものになった(商業的に)のはいつか? 
クリスマスがお正月より大事になったのはいつか?(これに関しては、『普通の家族がいちばん怖い―徹底調査!破滅する日本の食卓』でも触れてるので、オススメ)
テレビドラマ、東京ラブストーリーの赤名リカが破壊したものとは?



↑これは、男女論とも取れる視点。恋愛の主導権が女の子に移っていった過程が見えます。あ、フェミ論ではない。



サブカルチャー、マンガの捉え方の世代間の違い。
「一杯のかけそば」の捉え方の世代間の違い。



↑こちらは、戦後世代vs.戦中世代、と、戦後すぐ世代vs.現在の若者、の捉え方の違いを見つけてます。
「一杯のかけそば」で貧しかった兄弟は、オトナになったら「医者と弁護士」になってたんですねー。覚えてましたか? ほんと笑えるなぁ ものすごく昭和な出世イメージだったのですね。厭らしいわー。



1番びっくりだったのは、ここ10年くらいの大学生は大学の単位取得を「来た」と表現するとありまして。「キター!」って織田裕二? これはホントなのか? 単位は取るもので、どこかからやってくるものじゃないと思うんですけど。今もそうなのか気になります。



若者たちの上の世代がオトナにならないので、今の若者たちがオトナに対しての「若者」になれず、押さえ込まれてるというのが主張でした。それはそうですね。
経済も発展しないことだし、こうなったらこの社会のしくみから逃げてもいいのだとも。うーん、それは無責任な。
職人的スキルを身につけるなどして、生きていくと良いともありました。なるべく一般社会に関わらずに、しかし働くとなるとそういう選択肢もありそうですが・・・ 



別にいまの「若者」にこうしたら?なんて指南しなくてもさそうな本文だったのに、不思議なまとめでした。
あと、文体が村上春樹風なのが妙におかしいです。わざとハルキ風にしたみたいですね。





2008/05/02

『嵐が丘』エミリー・ブロンテ

ISBN:978-4102097045



☆☆☆☆ (☆4つは、オリジナルの魅力に対して)



新訳だというので、読んでみた。すらすら読めるような気がしつつ、ところどころ「??」。



あまりに登場人物たちのセリフがリズミカルに、矢継ぎ早に繰り出されているので、読み進めちゃうのですが、意味が掴みにくいところも多々ありました。原文を読んではいないので、もともとなのか、訳者の鴻巣友希子さんの特徴なのかは、定かではありませんが、おそらく訳者の力量かと・・・思います。



ヨークシャー訛りを出そうとされたのは、評価したいと思います。罵詈雑言の応酬は楽しく読みました。ほとんどの登場人物たちは、常にののしりあっているので、それが楽しいのは良いです。



それにしても、大昔に読んだはずか、ものすごい断片的なイメージでしか覚えてなくて驚きました。ヒースクリフが風がごうごうと吹き込んでいるキャサリンの居た部屋で、亡き彼女の名前を連呼している場面(怖かった)と、ヒースクリフが苛められてる場面。



それだけかよ! ・・・お陰で、まるで初めて読むような気持ちで感激して読みました。



読み終わって振り返ると、恋愛小説だとは到底思えない。確かに恋愛ではあるけれど、そんなロマンスじゃなくて、もっと人間の根本を見極めたいという欲求があると思います。
人が、どうやって自分で自分を認めるのかという問題とか、「自己」って何?とか、そういう問題を愛情と憎しみを糧に描こうとしているのではと思いました。



ヒースクリフ、という苗字をもたない肌の朝黒い拾われっ子の一代記でもあり・・・。ヒースクリフの実の子が早世してしまうというのも、意味深だー血のつながらない血のつながりでなく、魂のつながりこそ、強い絆になるということ? ヘアトンのことは憎からず、教育を与えなかったけどそこそこ良くしてやってたし。



拾ってきたリントン氏と本当の絆は築けなかったことが、ヒースクリフの激しい暴力的な愛情表現の底にありそう。
無償の愛を受け取りたかったのに、そしてそれはキャサリンが与えてくれると思っていたのに、彼女がアーンショウのやさおとこと結婚を決めてしまったことで、がらがらと崩れていったに違いない。
ヒンドリー(キャサリンの兄)から受ける虐待への復讐なんかは、キャサリンに捨てられた苦しみからみたら大したことではないかのようです。



※ナタリー・ポートマン主演で映画化(リメイクとか・・・)も予定されてます。



2008/04/22

2008/04/13

『女王陛下のお気に入り』入江敦彦

ISBN:4-87290-116-9 WAVE出版 2001



☆☆☆



英国王室御用達の、しかし庶民が手に出来る日用品をあつめたもの。グッズのページがカラーで、個別に由来とか使い心地とかのコメントがついてます。



チョコレート、掃除機、洗剤、バス用品、化粧品、下着、紅茶、ビール! さまざまなものがあって、面白い。
英国人は漂白好きだとか、ティーのお供のおやつは充実してるとか、欲しくなっちゃうものばかりです。



入江敦彦のHPもあります。そちらも濃くて面白いです。あたしは女王なのぉ☆と叫んでらっしゃいました。




『黒いマナー』酒井順子

ISBN:978-4-16-369470-2 文藝春秋 2007.9



☆☆



文体がいやなのか、視点がいやなのか。両方? 何冊か酒井順子のものは読んでいるけれど、面白さをさほど感じない。



自分もダメで、とか言いながらどうにも目線が(文体が)偉そうに思えて、そのあたりが私とは合わないのではないかと思う。



「はげ」「食事」「格差」「都会」「謝辞」のマナー、などなど。微妙な社会のおつきあいの仕方について書いてあります。



ある程度、現在のマナー本としてみることもできます。あと、若い世代(or親の世代)とのマナー観の違いについても。そうだよなぁと思いつつも、発見らしきものはありません。いつもの、酒井節でした。



文庫で読むくらいがちょうどいいかも。





2008/04/03

『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂幸太郎

ISBN:4-488-46401-7(創元推理文庫) 東京創元社 2003年刊の文庫



☆☆☆☆



うまく出来てる、またまた読み終わってすぐに最初から読みたくなる。小憎らしいー。
ただ、ペット殺しの話がからむのが辛い。理由もなく、理解もできない悪意というか。悪魔的行為って本当に恐ろしいです。



主人公の椎名はまっとうで心優しい凡人で、彼が触れる物語に登場する強烈な悪のかたまりが。このギャップが激しくて、くらくらします。



二つの物語が、交互に仙台の街で進んでいきます。
ひとつめは、椎名が新・大学生として仙台にやってきて、引越しの日に出会う「カワサキ」との書店襲撃と、椎名の新しい生活の物語。
ふたつめは、2年前の事件。「わたし」と、ブータン人の「ドルジ」と、わたしの元彼「河崎」が、ペット殺しの犯人とかかわっていく物語です。



二つの話をつなぐのが椎名で、彼はなにが語られているのか分からない。自分がなぜ書店襲撃をしているのか、それも分からない。
読み手はほぼ椎名の目線で事件の全体をつかもうと、物語の展開を読み進めていくことになります。



ちらっと出てきた伏線も(当然伏線なので、最初に読んでるときにはどんな意味あいのことなのか分からない)、最後にそうかー、と納得できて、ふふっと嬉しくなります。



悪を追放したとか、懲らしめたとか、そういうすっきりした感じにしないのが、妙な読後感につながりました。悪意を根絶することはできない、という切ない気持ちが残ったあたりで読了。哀しい。
登場人物たちも、それぞれの人生を送っていくのね・・・と意外とドライに終った感じでした。



No animal was harmed in the making of this novel.





2008/03/22

『走ることについて語るときに僕の語ること』村上春樹

ISBN:978-4163695808 文藝春秋 2007年



☆☆☆☆☆



墓碑には「少なくとも最後まで歩かなかった」村上春樹



「走る」ことを軸として、走り始めたころから現在までの作家としての気持ちのありよう、姿勢をからめながら、近すぎず離れすぎず自分自身について見つめています。



エッセイや、インタビューなどで表現してはいるけれど、積極的に作家としての自分について自分がどう考えているのかを、これほどたくさん書いたものはなかったと思います。



ハルキに対して根性などという言葉があまりに似合わなくて、もっと別の言い方はないかと考えてみました。自分に妥協するのがいやなんでしょうか? こつこつ、とか好きですよね。こつこつ。



不健康な精神も健康な肉体に宿るそうです。不健康な精神に耐える強い肉体で臨んでおられるようですね。長生きして、ぐいぐい井戸掘りができると良い・・・のかな。



18 ’till i die(死ぬまで18才)号」でカーブのある坂を下りながら、恐怖も感じているなんて、そうか怖いけど、バイクに乗っているんだなぁと感心。そして、大怪我しませんように、と本に向かって祈る。長生きしてほしいので。できれば私より。



それから、ゴールで待っている奥様がかけてくれる温かい言葉にじんわりしましたヨ。クールを目指してカッコつけたり冗談を言ってるハルキの、殻の中がちょこっとだけ見えたようで。



走ることに限らず、社会や物事に対してどういう態度で向き合うのかを、村上春樹の物語やエッセイから学んだなぁと思う。
学生のころ、あんなに毎日のように読んでたのに泣きたくなるような気持ちは起こらなかったのに! いまは切なくて大変。このエッセイでも、じーんとして胸が熱くなりましてよ。





2008/03/20

『狼少年のパラドクス』内田樹

ISBN:4023303771  朝日新聞社出版局 2007年



☆☆☆



学校教育、とりわけ大学のあり方について論じたもの。巻末には文部科学省の官僚とのやりとりも記載され、行動派な内田先生が見えます。



他の著作でも書いている路線で、テーマが教育再生となっているもの。先生世代の目から見たら今の教育現場はこうなんだろうけど、こうなると実際の学生がどう見ているのかも聞いてみたくなりました。団塊ジュニアのはしくれとして聞いてみたいなぁ
ゆとり教育世代の子どもたちはどう思ってるのかとかー、分数の計算ができない大学生とか(それでも大学生になれる)。



ところで、この本の本筋には関係してない余談部分で、大学のゼミで軽くクチにした「フェミニズム・・・」に対して、学生たちが「フェミニズム」を聞いたことがないと言ったというところが、やけに衝撃的でした。
フェミニズムって学校で習うわけじゃないけど耳にする言葉じゃないのか。そうかー、フェミコードって言葉も通じないんですね。
たぶん私の世代はフェミニズムっぽいことの叫びの最後にひっかかった世代だと思うのですが(女性も社会進出、とかそういうキャンペーンの余韻も)、激しく世代間ギャップを感じるエピソードでした。



そんな学生たちのため、そして学ぶ場の将来のため、自分のため、内田先生の奮闘が語られています。



あと、表紙がヘンで損してます。容量としては厚めだけど新書っぽい雰囲気にしておけばいいのに。





2008/03/10

『ラッシュライフ』伊坂幸太郎

ISBN:4-10-125022-7 新潮社 (2002年刊を、2005年文庫化にあたり改稿)



☆☆☆☆



作家を気に入ると、たいていは出版順(執筆順)に読む。ので、『オーデュポンの祈り』につづいて。



処女作から、2作目までの間に何があったの? めきめきと腕を上げましたね!という感激いっぱいの素敵に切なく、エゴが渦巻く、素晴らしい作品でした。



ちょっとした不思議、が日常にいつのまにか「ある」感じ、がいつの間にかのせられたなぁという感じで、気持ちよかった。意外と腹黒いのに、希望はちゃんとどこかに隠されているあたりも、読後感が良い点です。



ミステリでは、「新本格」とかいわれている方面を好むので、ラストの謎解きにはさほどココロ惹かれないものの、登場人物たちの普通っぽさとか、日常と、超能力の組み合わせとか、意地の悪さ加減が、読み終わっても、また読み返したくなってしまう一因か。



1日の出来事と思って読みすすめると、最後に数日間の出来事であったことが明かされます。このへんが、やや説明調に感じました。



お、やはり黒澤さんは飛んでいったのか!?って、あれ、時間も越えたのか・・・?? とか、そのあたりも確かめたくなって読み返したい。



リストラおじさんの悔しさ、かなり感情移入してました。撃っちゃえ!とか。いけないことだけど、脳内では撃ちまくりますよ。あんな子ども。老犬を手放さなかったのも、そうありたい姿をまっとうしてくれて、素敵なキャラだったな。





2008/03/05

『下流志向 学ばない子どもたち働かない若者たち』内田樹

ISBN:978-4-06-213827-7 講談社 2007年



☆☆☆



2005年に行った講演をもとに書き起こしたもの。現代の子ども、若者たちの学習意欲が低い、やる気の低下、わからないことを放置すること、ニート、などについて語っている。



「なぜか?」にコレだ!というひとつの回答があるわけではないけど、こういう見方があると考えさせてくれるヒントになりました。



全身を使ってだるそうにしている学生を見て、つい授業を聞いてしまうことを一生懸命我慢して、拒否しているのには、逆に相当の意思がなければできないのではないか、という切り口は新鮮。そうとも言える。
だらだらと45分間を過ごすより、つい教師の話を聞いちゃったほうが楽じゃないのか?という論理です。



自分のまわりの学力低下は結果として大学入試のレベルを下げることになるなら、(無意識かもしれないけど)歓迎しているのかもしれない、と。団塊ジュニアにはありえない考え方だ。何だか、世代間ギャップを激しく感じる話でした。



小学校に入ったばかりの子が「それは何の役に立つのか?」と教師にたずね、絶句してしまう、というのも面白い。そうそう、高校生のころは「数学なんて役に立つのか?」って思ってたな・・・



内田先生によれば、まず尋ねている小学生は、自分が経験し、あるいは想像できる範囲でしか「役に立つ」を把握できない。けれど、教育の成果というのは学び終えて振り返ってはじめて見えてくるものであって、学ぶ前のモノには何であるか、は決して理解できないものである、という。



確かに! ふふ、それに、役に立たないものこそ高尚だという話も(私のような国文科卒の大義名分。役に立たないって素敵!) 
考えることとは何か?を考える、数学を学ぶとは何を解明しようとしている作業なのか? 経済とは私にとって何か?



経済目線で、人間関係も自分も捉えている。という。お金を持っていれば偉いし、なければ敗者であり。弱き者は、市場から去り、孤独に死ぬしかないのか・・・?



自己責任、とは若く元気な者ならば無理なくできることであろう。しかし、人は誰でも年をとるし、怪我もするし、病気もする。100%じゃなくなって、それをすべて個人で引き受ける社会が成熟した社会と言えるのだろうか? 体力がある者が率先して、助けるべきではないのか?



自分がまだ若い、と思って読むとズキっと来ます。



 



『悶絶スパイラル』三浦しをん

ISBN:978-4-7783-1102-5  太田出版 2008年



☆☆☆



今は開店休業中になっている、ボイルドエッグズに連載してた「しをんのしおり」をまとめたもの。連載したものはすでに↑掲載時に読んでいたので、新鮮味は感じられないけど。



でも、いくつかの話題は、何度読んでも笑いとにやけが止まらない~



特に好きなのが『メゾン・ド・ヒミコ』のオダジョについて。もはや「名言」の域に達していると思うのが、「シャツがイン!



これを連載時に読んだときは、すぐにオダジョファンにメールしました。
まさに、そうそう!「シャツがイン!
これ以上、何をいうべきか?!ってくらいに、この映画をあらわした名言でした・・・
※オタジョのファンにとっての、と但し書きは必要ですが。



あとは、お仕事が忙しくなってきた時期なのでお疲れ発言が多い。のと、意外と感服してしまう妄想が控え目です。オタク妄想は、がっつり爆発されてくれると読み応えがありますね。



最近の日常は、「ビロウな話で恐縮です」ブログで読めます。





2008/03/03

『人のセックスを笑うな』山崎ナオコーラ

ISBN:4-309-016847 河出書房新社 2004年



☆☆



映画の原作も読んでみよう~、ということで読んだ。



何だか読むほどに腹が立ってくる小説だった。



この原作からよく作ったなぁ、の殿堂入り。
原作からは想像もできない素晴らしい脚本、映画作品になってますね、というランキング。不動の一位は『耳をすませば』宮崎駿監督で、暫定2位決定。



ミステリを除いては、文学賞を基準に本を読んだことはないのだが、これで「文藝賞」というので、驚く。賞ってあまり意味ないよな。



ダメダメな男の子の話を、ずっとダメダメなまま、最後も一ミリも移動してないダメっぷりのまま。それを評価したというなら、納得します。選評見てないので、何を評価されたのかサッパリ分かりませんでした。
う、ダメダメなままなのを「すばらしいダメの表現だ」と評価したのでしょう。



19歳の主人公「みるめ」と、39歳の「ユリちゃん(夫あり)」の、どこにも行かない、ただまったりと危機感もあまりなく、くっついて、とりあえずオトナにならないでいたいなぁ・・・と一緒に羊水みたいなぬるま湯のなかで、まどろんでいる。



「みるめ」は就職活動もしないし、学校で学ぶことはないと家業を継いで稼いでいる「えんちゃん」から可愛く好きと告白されても、「ユリちゃん」とのぬるい関係を選ぶ。
「ユリちゃん」は家事をしない(鍋は作れる)、ボサボサの格好で、色気を出す気はない感じ。



後半、「ユリちゃん」が離れていった。彼女は温かいママのおなかから外にでてみようとします。ただし、お料理も生活も面倒みてくれている「猪熊さん」付きなので、その気になっただけでしたけど。



22歳の「みるめ」が就活をしようと思っている、と友人に言うところがラスト。ということで、彼も遅れて社会への小さな一歩を、ママ(ユリちゃん)にさようならされて、やっと気づいたらしい。



そうかい、そうかい、オトナにならなきゃいけなくなったんだな、頑張ってくれ・・・



2008/02/29

『日本魅録』香川照之

ISBN:978-4873762784 キネマ旬報社 2006年



☆☆☆☆



雑誌、『キネマ旬報』に連載中を単行化。巻末にオダギリジョーとの(短め)対談掲載。



だいたい、写真1,2枚とともに記事があって、俳優さんや現場の様子がほんの少しではあるけど、垣間見ることができます。



なにか暗くて、かつ熱い感じ。40に近づいた頃からからぐっと良い顔になったなぁ、の香川照之の熱い心が綴られています。



もっと一歩引いた感じなのかと思ったら、自分の目からみた共演者の様子とか役に対する取り組み方への評価がはっきりしていて、想像以上に文章がきらきらしいのも驚きでしした。



松嶋菜々子をベタ褒めなのは、合点がゆかないけどな。ふーん。
『北の零年』での吉永小百合との会話、行定勲、崔洋一監督のこと。中国映画にもいくつか出演されていて、チアン・ウェン監督の現場の地獄ぶり、などなどなど。
俳優としては山崎努が目標にあるとか。セリフがなくても存在感にあふれた男、ぜひなっていただきたい。



三島由紀夫を青年期に愛読したそうで、おお、文学青年でもあったということでした。たまに文章があまりにきらきらしく走っているのも、彼の熱さのせいかもしれません。やっぱり東大だったから?



今は自分の家族を持ってお子さんもいるので、10代のころの鬱屈した感じは遠くに置いているのだと思いますが、父親不在、祖母に育てられた自分のことを完璧な人間ではない、と低く見ている様子があって、それが香川照之らしさのひとつでもあるらしい。



ときに暑苦しいほどに感動しすぎで熱い俳優による撮影記、かつ自分記。読ませます。





『猫のあしあと』町田康

ISBN:978-4062143226 講談社 2007年



☆☆☆☆☆



町田康の自宅と仕事場で保護している(元)野良猫たちの話。
1作目の猫エッセイ『猫にかまけて』でもそうだったけど、本当にただの猫好きなおっちゃんである作者の気持ちが炸裂です。愛情が無尽蔵にも思えます。ちなみに、『猫にかまけて』の表紙だけで、私はめろめろでした。



ヘンテコダンスを猫の前でくねくね踊っている町田康を思い浮かべたら、可笑しくてしょうがない(→猫に見せてちょこっと混乱させて、場所を移動してもらおう作戦のひとつ)。
ネタで書いたとは思えないな。たぶん、本当に踊ったんだと思う・・・そんなエピソード。ほかでは昼酒だ、なんだとぶらりな町田康も、猫の前ではかなりの働き者になります。



猫って、すごく何でも分かってそうな顔することもあって、そんな彼らが考えているであろうことを、町田康が文章にしているんですが、これがツボ刺激です。
「なんなの、このおっさん」調のやや高いところから見下ろしてますラインのお言葉の数々に、町田家の猫たちがいかに気高いかが分かるというものです。



それと数枚の写真あり。ちょっと目ヂカラを入れた町田康が棚(・・・に見える)に挟まって、猫とよりそっている写真など、猫バカ、親バカぶりを垣間見ることができそう。



しかも、このエッセイの素晴らしいところは、可愛がりまくって、めろめろで、しもべ状態でありながら、実は猫の小さな尊い命を預かっている立場だという大きな責任をいつも考えているのです。飼い主の鑑!



前作で、大往生のコと小さな子猫を看取った町田康、と奥様(家人、と作者は言う)。今回は、もしかしたら自分たちが良く考えないで良かれと思ってしたことが、大切なコの命を奪ったのではないか、という後悔、反省も綴られていました。もう、涙なしには読めぬ・・・ って、今も思い出すと半泣きになってしまいます。



猫好きにささげます、というかすでに猫に愛をささげたおっさんの独白、なのでした。







2008/02/22

『解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯』ウェンディ・ムーア

ISBN:978-4-309-20476-5  河出書房新社 2007年



Wendy Moore:
The Knife Man,The Extraordinary Life and Times of John Hunter,Father of Modern Surgery (2005) 



☆☆☆☆☆

奇人まみれの英国でも、群を抜いた奇人! ーー『ドリトル先生』や 『ジキル博士とハイド氏』のモデルとも言われる18世紀の「近代外科医学の父」ジョン・ハンター。彼の知られざる生涯を初めて描いた驚嘆の伝記。膨大な標本、世界初の自然史博物館、有名人の手術、ダーウィンより70年も前に
見抜いた進化論......。解説は山形浩生氏ーー「このジョン・ハンターはまぎれもなく、イギリスの誇る畸人の伝統を脈々とうけつぐ人物であり、その影響は医学の世界をはるかに凌駕している......かれの畸人ぶりは群をぬいており、それが証拠にかれは当時、そしてその後の小説などに多くのモデルを提供している。本書を抜群におもしろくしているのは、そうしたかれの畸人的なエピソード群のためであり、そしてそれが現代のぼくたちにつきつける問いかけのためだ」。 Amazon.co.jpより

とてもとても興味深く、面白く、読みやすく。読んでいる間、全く知らなかったことを知る楽しみに満ちてました。何がしかの世界の基礎を作る人って、当時は「行っちゃってる人」ですね。一歩間違えばマッドサイエンティストなジョン・ハンターの生涯です。



科学モノですが、解剖学そのものではなく、ハンターの生きた時代性とハンターの情熱、取り巻く友人や弟子に話題が絞られていたので、専門的すぎなくて素人にこそ伝わる内容だとも言えます。
タイトルの「数奇な」と表紙の胎児の解剖図でインパクトがありますが、内容は猟奇モノじゃありません。



18世紀のイギリス、ロンドン。消毒薬も、麻酔薬もまだない時代の外科医とはー。



瀉血(血を抜く)、吐かせる、浣腸する。古代ギリシャ時代から大して変わらぬ根拠のない治療を行っていたという。ただ患者をいたずらに衰弱させて死を早めるだけの「治療」しかなかったのでした。
また、社会的地位も高いわけでなく、さらに実際に執刀するのを床屋(スウィーニー・トッドみたいな?)にさせたりすることも多かったそう。



それを、膨大な数の死体と患者を相手に、観察して記録し、実験し、そして仮説を立てて実践・・・また観察、を繰り返すという、今なら当たり前の科学的態度で、時代の最先端を駆け抜けた男:ジョン・ハンターの生涯をターニング・ポイントになった発見や事件、出来事ごとに辿ります。



当時はまだ検体制度もない時代であり、かつ肉体をばらばらにされることへの恐怖もあって、外科医は死体をおおっぴらに入手できません。そこで、彼ら外科医は墓場を掘り返したり、病院でなくなった身寄りのない患者をこっそり手に入れたという。



ハンターは、訛りも強く、論文を書くことは苦手だったそう。
墓場荒らしもしたわけですが、それは身体のしくみを正しく学ぶためには、本でなく、実物を見ること、自ら考えることをいつも説いていたから。



このように先進的な考えをもった医学を学びたい人々は情熱的で的確なハンターを慕って集まるように。一方、旧来の医学の伝統や自分の地位に固執する人々からは攻撃対象になりました。味方も敵もたくさんです。



天然痘ワクチンを開発したジェンナーは、ハンターの愛弟子のひとりで、師の姿勢をしっかり受け継ぎ、常識と思われているものに対しても、自分自身の観察と論理的思考をもって取り組んだのでした。



ところで、当時はまだ検体制度もない時代であり、かつ肉体をばらばらにされることへの恐怖もあって、外科医は死体をおおっぴらに入手できません。 そこで、彼ら外科医は墓場を掘り返したり、病院でなくなった身寄りのない患者をこっそり手に入れたといいます。



夜な夜な死体を解剖し、標本をつくり、ガラス瓶にコレクション。コレだけ聞くと非常に恐ろしい話ですが、ハンターは人体、というよりも自然のあらゆることに興味を抱いて「なぜだ?」を問い続けたのでした。



その結果、ダーウィンが『種の起源』を発表する70年ほど前に、人類の祖先はアフリカの黒人であろう、という結論に至り、生物は常に奇形をうむ用意があること、そこから「進化」の概念も確信していたとのこと。すごい観察力と理論。 あまりに進みすぎていた生物、自然界への観察と仮説のかなりの正確さに驚愕しました。



ダーウィンよりも先んじてあの結果に至っただなんて、知らなかった。すでに動物への移植手術も実験していたなんて、さらに驚きです。



イギリス、グラスゴーにあるハンテリアン博物館(http://www.hunterian.gla.ac.uk/)には、ハンターの業績の一部、1万4千点にのぼるすさまじい量の標本、剥製のうち現在状態が良い3千点ほどが保存されているとのこと。



興味あります、見てみたいなぁ(ちょっとコワイですけど)



図版がもう少し多かったら、視覚的にもさらによく理解できたと思います。




2008/02/14

『シネマガールスタイル』おおたうに

ISBN:4789725820 ソニーマガジンズ 2005年



☆☆☆



おおたうにのイラスト、コラムによる好きな映画評・・・いや、映画案内。



ガーズルムービーを扱ってあるうえに、絵もかわいいしー、映画も好きなのが多かった。む、かわいい。好きな作品を取り上げているので、毒はない。石川三千花とか、中野翠の愛とは違う(お二人とも好きですが) カワイイ、ガーリーな1冊。
フランス映画のとこではB.B.ブリジット・バルドーが最高にかわいいということで絶賛されてまして、実は一作品も見たことがないのが悔しい。読んでると観たくなりました。



ウィノナ・ライダーのイラストを見てると、髪を切りたくなっちゃうんだよな。あの美貌があればこそ。











『fragments PLAZA』

ISBN:978-4838717545 マガジンハウス 2007年



1966年オープンのソニー・プラザから2007年に「プラザ」になった記念に、定番を中心に(ソニー)プラザらしいモノたちが掲載。色別になってたりで、とにかくカワイイ1冊。



最近は激しく「ソニプラじゃないと!」というのも少なくなったような気もしますが、でもやっぱり、行くと楽しくてしばらく見てまわっちゃいます。







2008/02/07

『村上春樹にご用心』内田樹

ISBN:978-4903951003 アルテスパブリッシング 2007年



村上春樹(作品)論として読んだなら、☆☆☆☆
村上春樹ラブ☆の大学教授の徒然草、なら☆☆☆



内田樹さんのことは全く知らず、おやおやな私でした。わりに色々活動なさってる方だったんですね。「村上春樹」につられて読んだわけですが、内田さんの熱きハルキストぶりに感化され、また読みたい気分が盛り上がりました。それだけでも、なかなかのやり手ということで。あ、表紙の「文化的雪かきをしてる羊男」だけでも、なかなか!



これだけ世界各地の人に読まれているのに、日本国内での評価が低い・・・。いや、低いっていうか、そもそも文学評論のレベルが低いので、読めてないと仰る。まさにそう! いまだに、軽いとか土の匂いがしない、とかそのレベルですよ。ふん。



ブログに書きおいたものから村上春樹に言及しているものを集めているので、全く大系だってません。その議論、続きをぜひ!と思うものがあっても次がないのでした。でも、つい先を聞きたい、と思わせるゆえ、きっと講義は楽しいだろうと想像。



村上作品においていつも繰り返される「欠如感」についての論、用いた言葉は違ってもそれそれ!と読みながら大きく頷く箇所でした。作品に出てくる言葉でいうなら「喪失感」ってことですね。
何を失っているのか、永遠に失われた/損なわれた・・・僕、がどう生き延びていくのか、いやぁ涙が出そう。私も、あなたも、すでに何かを失っているんです。
そして、失わないとあったことが分からないのであり、分かったときには二度と手に入らないのです。もう失ってますから。



と言うわけで、核心である、「何を」欠如しているのか、については触れていないのが非常に残念。他の著作で触れてるのか気になるので、しばらく内田樹の著作周辺を読んでいこうと思います。





2008/02/01

『ホルモー六景』万城目学

ISBN:978-4-04-873814-9 角川書店 2007年



☆☆☆☆★(4.5)



5点満点でもいいのかも。『鴨川ホルモー』と合わせたら満点。



エンタメ小説を読んで、楽しくて仕方がない気持ちになれるのって最高です。病院の待合室で、にやけながら読みました。毒気のあるサスペンスとかミステリも魅力的ではあるけれど、淡い恋、切ない恋、友達の恋、胸がきゅんとなる6つのお話。



まったく、オニたちが武器を出したり、川べりに上陸したり・・・、想像するだけで笑えます! 『鴨川ホルモー』を読んでいなくても、ある程度は楽しめるでしょう。でも、これは読んでおいてこそ、楽しめます。



凡ちゃんの恋、があるというのでどきどきして読んだ「第二景 ローマ風の休日」は、かわいくて応援しまくりました。司令官としての凡ちゃんをもってすれば、ホルモーやってないときだって、活躍するに違いないと思ってました~



それから「第四景 同志社大学黄竜陣」「第五景 丸の内サミット」となると、いくらでもホルモー世界の話は続けられるわ、と唸る。
京都の景色、歴史があってこそ際立つホルモー、東京ではあまり広がらないかも。でも、同志社大学~が復活したら面白いのに。もう、学生たちは勉強してるヒマはなくなりますね。
「第六景 長持ちの恋」は切ない恋でした。琵琶湖・・・会えてよかったです。




まだホルモー続編が出そうな気がします。500代目たちの活躍、もっと読みたいですもん。



2008/01/28

『オーデュボンの祈り』伊坂幸太郎

ISBN:4-10-125021-9 新潮文庫(2000年 新潮社刊、文庫化にあたり改稿あり)



☆☆☆☆



新潮ミステリー倶楽部賞受賞した伊坂幸太郎のデビュー作。入院したときのために(いつ?)とっておこうと思っていたけど、映画化されまくりの伊坂作品を読まずにはいられず。



地図にも載っていない、誰も存在を知らない「萩島」に連れてこられた主人公「伊藤」が、150年間、閉ざされた島で起こるカカシ殺人を中心とする数々の殺人や謎を明かす物語。伊藤が探偵気取りじゃなく、巻き込まれ型なのが好印象だ。



未来が分かるしゃべるカカシ、反対のことしか言わない画家、唯一島の外に出て行ける男、もうひとりの島の外から来た男、カカシを恨んだ女、などなど。



最初、設定のファンタジー具合をどう捉えればいいのかしらと戸惑ったものの、伊藤が島に慣れるように私も慣れていった気がする。カカシがしゃべることについて、科学的(というのかなぁ?心理学的に、かも)ファンタジーじゃない見方が作品内に示されたときは、ガツン!とやられたーっという気分になった。程度で言うと『アクロイド殺し』くらい。



ところが、そうじゃない、という見解となってラストが明るく輝いて見える展開に驚きました。さわやかでした。ものすごく気になることはいくらでもあるけど、そんな重箱の隅をつっつくようなことはやめておこう、という気にさせてくれる終わり方で満足です。



ミステリとして捉えるなら物足りないけど(新本格な作品が好きなので)、総合力で4点。次も楽しみ。





2008/01/23

『音楽を「考える」』茂木健一郎/江村哲二

ISBN:978-4-480-68760-9 筑摩書房(ちくまプリマー新書058)



☆☆☆



プロフェッショナル(NHK)でお見かけします、脳科学者(意味はよく分からない肩書きですが、著者欄に書いてある)茂木健一郎と作曲家の江村哲二さんの対談。



茂木ちゃんといえば「クオリア」。そして、お2人は『脳とクオリア』という茂木ちゃんの著作を理解したうえで語り合っていたのでした。がーん、クオリア、が全くわかっていないので、どこで共感して語っているのかサッパリ・・・で、☆3つ。



仕方がないので♪『脳とクオリア』も読みかけー、こっちは難しいっす。



音楽というものが、西洋においては特に数学的な捉えかたをしてきたこと、美学でも最高位の美とされること、そこからさらに生まれた「現代音楽」をどう捉えるか?というクラシック音楽の簡単な歴史の部分は、実際に作曲している江村さんが話すと説得力がありました。
「現代音楽」もいかにもな「現代音楽」というジャンルになってしまったかも、とか。日本人はメロディがはっきりあるものを好むというのも、自分に照らすと「そうそう!」です。



でも、これら音楽を「美しい」と感じるのは何か?は、分かっていないと茂木ちゃんは言ってまして。ふーん、また、0から10までのレベルのものをみて、初めて10が10であることが分かる、とも。つまりジャンクフードの味しか知らない人に、採れたて新鮮野菜の味は想像もできない、というわけか・・・。



日本でクラシック音楽ファンが広がらない訳、についても語ってます。↑この説からいえば、そもそも日本人がクラシック音楽に触れる機会がほとんどないから、好きにも嫌いにもなれないということでしょうか。音楽ならラジオでイケても、「オペラ」なんて絶望的。私も演奏会形式でしか聞いたことがありませんし。



音楽の時間に、ちゃんと聞いたこともないですしね。子どもにこそ一流のものを見聴きさせて、最高であるモノサシを身につけさせるべきですよ! ね!


2008/01/19

『オカマだけどOLやってます』能町みね子

竹書房  2006年 ISBN:978-4812428917

能町みね子、2X才。オカマだけど都内の某会社でOLやってます。こっそり働きはじめて約3年。会社の人は誰もその正体を知りません。(竹書房)

☆☆☆☆



くすぶれ!モテない系』で笑わせてもらったので、こちらも読んでみました。この本の出版後100日くらいにリフォーム(性転換手術)をすることになっていたとのこと。現在は、戸籍も「女」になっているそうです。



イラストがちょこっと脱力系でかわいい。書いてないこともたくさんあるでしょうけど、オーエルになってからこの話題にはこう答える、とか考えたりしてる。「生理が軽い・重い」に始まって「制服のスカートがテカッた」とか。女子としての学生生活を捏造とは、涙ぐましい努力です。



これが女子か!とびっくりしてる箇所があって、改めて言われると「楽~♪」なんですね、女子は。重い物を持たなくていい、とか、上司には「悪いんだけど・・・お願い」って丁寧に頼まれたとか。サラリーマンも経験したからこそ身に染みるんだろうな。



自分の性を疑ったことがないので、そのズレに気づいたときは恐怖かもしれません。名前、年齢、性別、いつでも割りと書類に書くので、性別って根っこのIDですものね。



シリアスな問題を、さらさらっと、しかし真面目に書いてて素敵な本でした。



オカマってありますが、この場合はいわゆるオカマさんとは違いますね。分かりやすくこの表現にしたんだと思います。





2008/01/14

『小林賢太郎戯曲集』小林賢太郎

幻冬舎 2007 ISBN:978-4-344-01383-4



CHERRY BLOSSOM FRONT 345(ラーメンズ第11回公演)
ATOM(ラーメンズ12回公演)
CLASIC(ラーメンズ13回公演)



☆☆☆☆ (2段組のため改行が多くてやや読みづらい、のでマイナス1☆)



ラーメンズの戯曲集、DVDでは見てるので動きも大体分かりつつ、活字でも笑ってみました。動きが加わると、そりゃ最高ですが、言葉だけ見るのも禁欲的な感じ・・・?楽しい。



切ない系、ばかばかしい系、びっくり&ドッキリ系、いろいろあるけど、共有してるはずの言葉の意味がズレてたり、言葉と行動がズレていたり、そんな「ズレ」がなんとも言えない笑いを引き出します。意外とホロリとしたりするもの素敵な賢太郎さん~



バニー部の賢太郎さんがすっごく好きなんですが・・・手の美しさといったら、それだけで女子ノックアウトですよ!



2008/01/03

『鈍獣』宮藤官九郎

ISBN 4-89194-707-1 PARCO出版 2005



第49回岸田國士戯曲賞受賞『鈍獣』の戯曲本。
最後にキャストの生瀬勝久、池田成志、古田新太と宮藤との対談つき。女優さんたち、西田尚美、野波麻帆、乙葉のアンケート、最後に演出家の河原雅彦のコメントあり。



見る前に読んだほうが面白いかなと思い、先に読んでみました。
小説の映画化だと不満に思うことが多いけど、脚本を読むのは自分の脳内演出的で描いたのと、実際の公演とのギャップが面白い。ので、脚本を読むのはけっこう好き。どう考えても、実際の公演のほうが素晴らしいのだし!



本筋はわりに掴めるけど、1幕2幕の冒頭にあるコンビニのおばちゃんたち(当然、生瀬、池田、古田の3名が演じる)のとこが活字じゃ物足りなさすぎだ。江田の挿入歌部分もこれは活字じゃ面白くないのでした。新太が歌うの観たーい。



文字を追ってるだけでも、3人の妖しさがむんむんな感じ。いまだに謎ながら、古田新太の色気とか、成志のカッコよさとか、生瀬さんのつかみどころがありそうでないとことか。



殺そうとしても殺そうとしても死なず、憎しみももたれず(それどころか好意的態度)、そんな凸川が次第に少しずつ不気味さを増していくような感じでしたが。
ラストの「覚えてないわ」、覚えてないのか知らないのか、それもはっきりしないのって気味悪いな。誰を殺そうとしてるのか・・・ちゃんと分からなくて、コワイ。